高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-
1985年に江戸川乱歩賞を受賞して2000年までに30冊もの小説・エッセイを世に出しながら、現在はホームレス寸前の極貧生活を送っているという著者。その著者が近在のコンビニ店で糊口をしのぐために働いた1年余のアルバイト生活を記した書です。
著者によればこのコンビニ、やる気のない本部の責任者たち、ひとくせもふたくせもあるアルバイターたち、そして怪物がごときクレーマーやチンピラ顧客たちのせいで、崩壊寸前。事実、著者はこの勤務先を閉店という形で去ることになるのですが、とにもかくにも書かれている事柄は多くの人々が病んでいるなと感じさせる事件ばかり。読んでいて、唖然茫然、著者と共に憤りを感じて心拍数と血圧が上がる思いがします。
面白おかしくコンビニの舞台裏を描写した書では決してなく、著者は憤怒を込めてコンビニをとりまく病をえぐり出すといった趣の書です。読んでいて決して愉快な書ではありません。読み終えた後の数日間は不快感が胸にこびりつく感じがするほどです。
しかしここに書かれた人々は今や想像を絶するという類いの輩ではなく、日常的な風景となっていることを容易に想像させる世の中になっています。大声で店員を怒鳴りあげる顧客や、接客業のイロハも知らなさそうな非礼なアルバイト店員は、著者が暮らす地域ばかりでなく、私の住む町のコンビニでも見かけることは珍しくなくなりました。
その原因は、著者がそっと忍ばせるように書いている言葉を引くなら、「人との一期一会を大切にし、約束の重さを実感する」(238頁)人々がいなくなってきたということではないでしょうか。ひょっとしたら二度と出会わないかもしれぬ相手に対して、かくも人は無礼になれるのか。そんな好個の例ともいえる本書登場の人々が、「一期一会」という言葉の意味を知れば、何かが変わりそうな気がするのに。
自戒の意味も含めて深くそう感じさせる書です。
モーツァルトは子守唄を歌わない (講談社文庫)
2006年はモーツァルトイヤーでもあるし、もっと注目されてもよいのではないか。とはいえ、モーツァルトは登場しないけど。
探偵役に据えたベートーヴェンの、このキャラクターを生んだという手柄だけでも評価されるべき作品だ。
著者が出版業界と衝突し干されたがために、その作品の全てが今や幻の状態。同時に乱歩賞を受賞した東野圭吾との差たるや、今や・・・。
しかし、読者にとってはそんな事情は知ったことではない。たとえいくら著者が聖人で業界が悪の権化であろうとも、作品が出ないことにはどうしようもないではないか。できあがった作品には何の関係もないことである。
つまり、この作品は歴代乱歩賞受賞作の中でも、かなり高水準で、楽しめる、とてもよい作品だということが、僕は言いたい。
推理小説常習犯―ミステリー作家への13階段+おまけ (講談社プラスアルファ文庫)
どんな業界にも陰部はある。
私は新聞社に勤務したことがあるので、正義の使者、社会の木鐸なんて言葉が大嘘であることは知っている。
そんなことは警察や官僚、商社、銀行、街の工場だって同じだと思う。だって所詮は人間のやっていることだからだ。水清ければ魚住まずでしょ。
小説家の世界も芸能界に負けず劣らず大変そうだ。
しかし、どんな業界でも苦労はつきもの。そんなものさと諦めることも必要。もちろん、努力は続けるべきだが。
BREAKING GENERATION
当時高校生だったメンバーが、たった1年弱の間に全てのオリジナル曲をつくり、月に何度もライブをこなした。自分達でチラシ(今はフライヤーって言うんだっけ)をコピーし切り貼りし、レコード屋に置き、ライブハウスの外で配って告知した。タバコの煙と大声じゃないと聞こえない会話の中で、パンクの音が踊ってた。ルート66は、キャッチーで楽しい曲ばかりだ。これが当時高校生だった彼らがストレートに、70年代パンクの音にのせてくるんだから、カッコ悪いわけがない。決して巧くないけど、最高にピカピカで怖いくらいにカッコいい。7月には当時のメンバーでライブをやるらしい。あの頃のライブハウスを感じることができる絶好の機会がくる。