蟹工船(韓国本)
現在マスコミに採り上げられて話題になっているが、本来は社会主義の幻想が解けた現代にプロレタリア文学はそぐわないはずだった。しかし、文学ではなくマンガとして作品化した場合、結構いけると思ったのが今回の本である。劇画調のタッチで書かれていてキャラクターがかなりデフォルメされてわかりやすく滑稽でさえある。当時の社会風潮を知らなくても一つの作品として十分楽しめると思った。もし原作が読みたくなるのであれば、読書への取っ掛かりとしてマンガから入るというのはいいかもしれない。
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
プロレタリア文学、というとまず出てくる作品だがなんだか取っつきにくい
感じがしてやっと最近手にしたが、こんなに生き生きとした面白い作品とは
思わなかった。船内の生々しい描写にも驚くが最後まで読ませる力を
この作品は持っている。資本家の労働者からの搾取という問題は今でも
解決されてはいないが、この作品が70年以上も命脈を保ち続けている
のはそのテーマ性よりも人間が描ききられているからではないだろう
か。同時収録の「党生活者」で敷衍される組織の問題にしても、まず
そこには人間がいる、ということを我々にまざまざと思い起こさせてく
れる。蟹甲船はプロレタリア文学というよりもまず文学として成功している。
これは作者にとっては本意なのであろうか・・。
蟹工船WORK SONG BOOK~日本の労働歌集
少し前に蟹工船が再映画化されて注目されていたので、労働歌とはどういうものか興味があって買いました。
全部聞き終わると、相当疲れます。なにせほぼ全ての曲がハイテンションですから。
軍歌の方がまだましかも・・・
学生運動華やかりし頃には、こういう曲をみんなで肩を組んで歌ってたんだなあと思うと、隔世の感がしますね。
当時の雰囲気を感じるのには、いいのではないでしょうか。
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)
オノマトペの多用、しっくりこない比喩。そうあげつらうと駄作と評しているみたいなのですが、労働者の沸々とした怒りを荒々しく表現しているのに効果を与えているようです。ダイナミズムが生まれていると言えば、より自分の気持ちに近いかもしれません。
搾取される労働者の怨嗟が爆発するまでの光景が、肌を刺すオホーツクの寒風のように脳裏に突き刺さりました。
死と隣り合わせの蟹工船の労働者ほどではありませんが、低賃金重労働で喘いでいるのは、現代のワーキングプアも同じだと思います。今と符合するエピソードがいくつも見受けられました。時代が巡って、現代において再び注目されるべき作品だと思います。
読んでいて作者は思想云々より弱いものが団結することの重要さを説いている気がしました。
しかし、こんな扇動的な小説を書いたら特高に捕まるのは火を見るより明らかだろう。
命を賭してこの作品を書いた小林多喜二の人間性に頭が下がる思いでした。