PUNK 1 (ジェッツコミックス)
ひとつのすばらしい魅力と、ひとつの問題点がある。
長尾先生の漫画は、一般に人気の漫画ではない。
イコール面白くないというわけではない。
すごく面白い。
このわけは二つ説明すればわかるだろう。
ひとつは、すばらしい魅力だ。
おしゃれ手帖の後半以降の漫画には、疾走巻がある。
物事がどんどんと展開していき、いつの間にか引き込まれる。
はじめは、なんだこいつと思っていた変な登場人物でも、
気がつくとそいつに感情移入している。
そして迎えるクライマックス。
劇的なまでの疾走感は一度はまると、病み付きになってしまう。
VJ(ビデオジョッキー)もされているそうなので、
実にコマ割りからシーンまで、映画のような一瞬がある。
本作PUNKは、連載当初、あらすじがはっきりせぬままスタートした。
はてなマークが頭にいっぱい浮かぶ中で、問題が発生する。
そして、画面に大きく「PUNK」と表示される。
その瞬間をあなたにも体験してほしい。
迷わず、他の作品のコミックスを購入しなくてはいけなくなるだろう。
そして、ふたつめ、問題点だ。
多くの日本の漫画は週刊誌ないしは月刊誌で連載という形をとられている。
この連載という形でしか作品を出しづらい状況こそが、
長尾先生の魅力を半減させている。
失速感を、時間が殺すのである。
細切れで味わうのではなく、大きな流れに身を任せ、ゆだねる。
コミックスでまとめて読むべきなのだ。
幸い今回同じタイミングで、『バンさんと彦一』も販売された。
『おしゃれ手帖』も再販された。
コミックスで読まなければいけない、
またコミックスが売れると阪大されたのだろう。
時代の流れは確実にこちらに来ている。
そんな中、いま私たちにできることは、
このコミックスを買って読むことである。
長尾先生とともに、その疾走感に身をゆだねようではないか。
PUNK 3 (ジェッツコミックス)
今年で29歳になる俺は当然リアルタイムでセックス・ピストルズを体験していないから、彼等の存在がいかに70年代のイギリスにどんなものを与えたのかは理解できなかった。でも『PUNK』を読んで、当時の衝撃を、はっきり理解できた。
とんでもなく、アナーキー。心配になるぐらい過激。そして、すべてを嘲笑うかのようなユーモラス。これは真の意味の『PUNK』だ。長尾謙一郎は、現代のジョニー・ロットンだ。