名勝負数え唄 俺たちの昭和プロレス (アスキー新書)
なぜ僕は熱き思いを抱いてプロレスを見ていたのか? 結局のところ、それは人間の「凄み」が画面に映し出されていたからだ。その「凄み」とはさらに言葉を重ねて言えば、人間がおのれの限界を超えて深い部分にある自分自身を表現する瞬間のことである。「ドラゴンブーム」のころの藤波は毎試合毎試合、自己を深化させていたし、「噛ませ犬」発言以降の長州も、確かにこうした「凄み」を身につけていくのが感じられた。今回、この本を読み(コアなプロレスファンではないので、こうした本は初めて読んだのだが)、彼ら自身の口から出た言葉でこうしたことを再確認できた。
僕自身、例に漏れず、その後プロレスを離れ、格闘技などを見るようになったが、求めていたのはやはり人間の「凄み」であった。そうしてわかったのは、「凄み」はそれを備えた人物と相対峙することでしか引き出されないということである。藤波と長州がリング外でのアントニオ猪木に強く反発しつつも、畏敬の念を持ち続けているのは、彼がリングでは対戦相手のレスラーから「凄み」を引き出す天才レスラーだったからに違いない。そして藤波と長州が還暦前後の年齢になっても、リングに上がり続けている(というかまだお呼びがかかる)理由もまた、彼らが現在の若手レスラーにはない「凄み」を備えているからに他ならないのではないか。
プロレスゴシップには興味がないので、この二人が誰を評価して誰を嫌っているのかといったことは僕にはどうでもよかった。面白かったのは、もう一度生まれ変わるとしたらという質問に、受けの藤波が政治家、攻めの長州が阿闍梨になりたいと答えていることだ。どこまでも自分の可能性に貪欲な二人なのである。
長州力 DVD-BOX
ブレイク前の大物との試合から
2001年の川田との初対決タッグマッチまで収録されてます。
全日本参戦時の試合は一切無いのは仕方ない所、か。
藤波からベルトを奪取し マサ斎藤と抱き合うシーンは やはり必見ですね。
藤波との試合は パワーホールで風を斬って入場するシーンも入ってますのでオススメです。
2001年以降の試合や サムライ等で放送した試合を加えてまた 発売して欲しいです。
力説 長州力という男
インタビュー中に(怒)という表記が何度も出てくる。確信を付いた質問、読者が真相を知りたい質問に対する答えはほとんど(怒)でうやむやにされてしまう。怒られるとGKはもうそれ以上は突っ込まない。そんな展開が繰り返される。怖い長州が健在とも取れるが、読み物としては物足りなさも残る。ジャパンに出る際の猪木との関係、北尾との確執、幻のヒクソン戦の真相、全ての答えは曖昧だった。真相を語るにはまだまだ時間がかかるということか?唯一「オッ!」と思ったのはUインターとの対抗戦についての部分。それを「オッ!」と思うかどうかは読者しだい。長州とプロレス史についてかなり深い知識がる人は楽しめる。
LEGEND THE PRO-WRESTLING 2011 名勝負数え歌 藤波辰爾vs長州力 [DVD]
バックドロップは本来ブリッジを使つて相手を投げる「投げ技」である。ジャンボ鶴田はこの「投げ技」バックドロップの名手で、「投げ技」バックドロップそのものが鶴田によつて完成型に到達したといつても過言ではなからう。ルー・テーズより鶴田のはうが技巧的にうへであるのも明らかだ。だが「投げ技」バックドロップが完成したとき、「投げ技」とは異なるバックドロップが生み出された。それが長州力の「衝撃系落下技」のバックドロップだ。時期的にはいずれも1980年代である。当時、長州のバックドロップは高角度バックドロップまたは垂直落下式バックドロップといはれてゐたやうに記憶する。だが長州のバックドロップはただ相手を持ち上げて落とすだけではない。長州は相手を最高位置に持ち上げたとき、すなはち位置エネルギーが極大となつたとき、相手に20度前後の右回転を加へて最適な体勢に持つていつたうへで落下に入り、相手をマットに叩きつける。いはゆる「捻りを加へたバックドロップ」だが、この右回転によつて最大の打撃を与へる落下速度と角度がコンスタントに得られる。またこの右回転があることによつて最初のホールドでの自由度が高まり、特定の方向から相手をホールドする必要がなくなつた。鶴田のやうな「投げ技」バックドロップは左後方から相手をホールドしなければ投げ切ることができないが、長州のバックドロップにはこの制約がない。相手の左後方から左側面、場合によつては左やや斜め前からのホールドでもバックドロップに入れる。これによつてさまざまな体勢、とりわけ防御を余儀なくされてゐる不利な体勢からでも、確実に威力のあるバックドロップが投げられるやうになつてゐる。長州力のバックドロップは最高位置での右回転といふ独自な操作によつて最強のバックドロップになつてゐるといへやう。いずれにせよ長州力によつて現在主流となつてゐる「衝撃系落下技」バックドロップの道が拓かれたのである。長州力の技は決して多くないが、このバックドロップのやうに従来の技とは一線を画し、威力が大幅に改善してゐる技が多い。長州は偉大なプロレスラーである。