カネミ油症―終わらない食品被害
ドイツのある飼料用脂肪製造会社でダイオキシンを含む工業用脂肪が飼料用脂肪と違法に混合されたことが2010年12月21日に判明し、2010年11月11日以降製造した全ての飼料用脂肪を汚染があるものみなされた。ダイオキシン濃度が1.1-1.5 ng /kg製品で、EU規制値は0.75 ng/kg製品を上回る製品の販売が規制されている。ダイオキシンと類縁にある毒性の高いPCB(商品名:カネクロール)を高濃度摂取した食品被害の救済法がまだ成立していないことを本書で知り驚いている。内閣府の食品安全委員会は2003年に発足し食品のリスク評価を始めているが、過去の食品事件についても、国民に啓蒙する役割をもつべきであろう。
コーラベイビー―あるカネミ油症患者の半生
この本は、カネミ油症患者―人類史上最悪のダイオキシン中毒―であるトヨコに出会った著者が語るトヨコの人生である。著者は医者であり、カネミ油症の原因物質がPCB(ポリ塩化ビフェニール)ではなく、PCDF(ダイベンゾフラン)というダイオキシンに匹敵するくらい毒性が強い物質であることを発見した人物である。著者がその原因を発見してから30年後、カネミ油症患者であり運動家であるトヨコに出会い、その半生に惹かれる。この本は、そんな著者がトヨコやその夫らに話を聞いて、彼女の半生を書き綴ったものだ。読み進めると著者が、カネミ油症患者のトヨコだからではなく、トヨコの生き方そのものに惹かれている様子が伺えるだろう。
カネミ油症―薬害―は過去のことではない。なぜなら、カネミ油症で生まれたこどもが大人になり、結婚し、その子どもが「コーラベイビー」として生まれている。カネミ油症の特徴である黒い赤ちゃんが生まれているのだ。ダイオキシンの影響は次世代へ影響を与えているのだ。