経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書)
本書は本格的な成長軌道に入ったインドネシアの成長ポテンシャルの解説のほか、国家主導の経済運営の仕組み、財閥の概要を解説する。独裁や民主化の痛みを乗り越え、安定軌道に入ったインドネシア。人口増による経済発展も今後30年は続くといい、中国、インドに続くアジアの成長市場はインドネシアになると指摘している。東南アジアというとタイ、ベトナム、シンガポールがまず上がる。島嶼国家で東南アジアとしては辺境にあるインドネシアだが、民主化も実現し、しっかりしたエコノミストが主導して安定した経済運営をしていて、何より経済成長の余地が多いインドネシアはもっと注目されるべきだという。
スハルト大統領以降、経済運営を主導したのはアメリカの大学で経済学博士を取得した「テクノクラート」だった。学者から大臣、政府顧問として招聘され、スハルト時代は開発経済と均衡財政を実現した。スハルトの保護主義がアジア経済危機でこけると、外資規制撤廃や汚職撲滅、金融、補助金廃止など、規制や旧体制に守られた人の猛反発と戦いながら先進国型の経済に転換しようと努力している。今は財閥の経営者も国家経済にかかわっている。
ユドヨノ政権まで激しく動いた固まった政治経済のシステムが分かったのはよかった。いずれにしろ、自国の人材で経済が運営できているのは優れている。
次なる経済大国
BRICsの根拠は、単純に 「若年人口の増加」 と明快な解説。
その他に、次なるBRICsとして N-11にも触れており、こちらの根拠も人口の多さが基準。
この辺りは他のレビューに詳しく書かれているので省きます。
また、「GDPの大きさが、必ずしも その国民一人当たりの富に直結する訳ではない」
という指摘には改めて頷く思いでした。
その他、実際に著者が訪れた諸国の逸話がそれなりに興味深く、参考になります。
経済成長に伴う資源問題についても触れていますが、やはり基本的に楽観的な書き方です。
日本とBRICsの関係について、特に日本のジレンマとしては
1:日中関係 (両国の過去の関係を改善できるのか)
2:日本人の英語力の低さ (通訳がいたとしても、欧米諸国と深い議論ができない)
3:移民受け入れに消極的なところ (治安悪化の懸念など)
を挙げています。
この辺りは、とくに目新しい意見ではなく 今さら感を持ちました。
また、この本の論旨から外れているとはいえ、日本国債の破綻問題や復興問題については
まったく触れておらず、この点について著者は不自然なほど楽観的なようです。
それとも、やはりゴールドマンサックス会長だけに、債権国である日本に米国債の一部売却
をさせずに 消費税などを引き上げさせればいい、とでも考えているのでしょうか。
基本的な論旨として、最後まで BRICsとN-11を軸としたグローバル経済の未来に対する
楽観論が一貫して述べられている本です。
正直、この本の情報量に対して 1,890円は高すぎるように感じ、古書での購入をお勧めします。
経済大国なのになぜ貧しいのか?
お,おもしろい!
巻頭でいまや経済は心理学と言い切るところや,年収の順に権力階級を決めている点(米政府より欧米の銀行オーナーがはるかに権力を持っているとのこと)に,怪しさを感じましたが,
新鮮な角度から,日頃新聞や経済ニュースを眺めていて思う疑問を解き明かしてくれます.
やはり日本には国家戦略を持ったリーダーは存在せず,省益・保身に身をやつす面がある官僚がアメリカに各個撃破されることで支配されているのが実態だという感を深めました.
副島隆彦さんや,キレのある関岡英之さんの政治経済分析をさらに過激にしたかんじの苫米地さん,
身の危険を感じてか,根拠はぼかしてある部分がありますが,説得力があります.
こんな侠気のある人達がいるんだなあ.
日本も捨てたもんじゃありませんね!
一読をお勧めします!