その未来はどうなの? (集英社新書)
不思議な作品です。ここには答えはありません。あるのは、日常で提示される「大きな」問題への素朴で単純な疑問です。この大きな問題には様々な時事的な論点が含まれます。出版、TPP、テレヴィ、商店街、経済そして民主主義の将来までカヴァーされているほどです。疑問は、問題の根底にまでさかのぼって提示されます。疑問が呈示されても答えは示されません。未来は所詮不可知の領域なのです。どうしてこの現在の袋小路にたどり着いたのか、そしてその袋小路へも現代の日本人は望んでたどり着いたという背景がさりげなく指摘されます。呈示される疑問が明らかにするのは、私たちの思考や認識がどれほどいい加減なイメージや型によってかたちづけられているのかという単純な真理です。そういう意味では、分かりにくい不親切な作品なのかもしれません。「男と女の未来」の部分は「美人論」を含めて必読ですね。
戦国★男士 上巻 【期間限定版】 [DVD]
収録内容は商品の説明に書かれている通り。
滝口幸広演じる伊達政宗、平野良演じる伊達成実、内田譲演じる片倉小十郎らが、数多くの武将を相手に抗争を繰り広げていく姿を完全学園ドラマ化。
学園ドラマと聞いて距離を置かれる方もいるかもしれないが、確かにその気持ちも分からなくはない。
だが、第1話、2話、そして3話と見続けていくうちにハマっていくこと請け合い。
暴力は嫌いだがケンカは大好きな政宗、その従兄弟で唯一顕現していないことを引け目に感じる成実、政宗を陰ながら支える小十郎の織り成す物語は、ある種この時代に要求され得る絆的なものを感じるのは私だけだろうか。
2011年10月〜2012年3月(予定)放送の戦国★男士から、前半13話分が収録。
その後半、戦国★男士 下巻が6月6日に発売予定とされているが、3ヶ月先がとてつもなく遠く感じる今日この頃。
お笑い要素あり、涙あり、そして歴史の勉強にもなる。特に付属のブックレットは、登場人物の顔写真とともに劇中での役所や実際の歴史の人物の解説など、豪華な特典である。
主題歌であるHAZAMAのPV。
曲の出来がもう素晴らしい。戦国鍋TVの曲はいい意味でのチープさ、楽しく聞けて学べる面白さがあったが、これは既に一般の曲として通用できる高レベルの楽曲。
そして、主役の3人が踊りながら歌う。バージョンも通常の「PV」と呼べるものから、ダンスをワンカット長回しで撮影したものまで、全4パターン存在する。
ここまで高く絶賛するこの作品。
しかし、敢えて星を一つ下げている点を挙げるならば、作品制作上もちろんそういう表現になってしまうのだが、殴られた後の出血シーン。
これがもしかしたら、血が苦手な人は参ってしまうかもしれない。
まぁ、その点を除けば主題歌CDも付いてるし、作品自体も商品自体もしっかりしている。
歴史に詳しい方も詳しくない方も、この作品を知らない方でも、一本のドラマとしても観ることができる戦国★男士。
おすすめの商品だと断言できる商品である。
モナリザの微笑
1990年5月発売のCDで、合唱隊という若き声楽集団のデビュー・アルバムです。CDラックの奥から引っ張り出して聴いています。廃盤は仕方がないのですが、選曲もアレンジも演奏も素晴らしいので、どこかで再発売されても売れると思います。現に中古市場では相当な価値があるのですから。
曲目を見てもらえればすぐに理解できますが、1960年代の和製ポップス、当時は歌謡曲と言っていましたが、そのジャンルの中から若者たちに支持されたヒット曲ばかりを合唱にアレンジしています。
グループサウンズも正統派のベルカントで聴きますと格調高くなります。勿論それがねらいですし、面白い試みは上手くいっています。途中、クラシック音楽の一節が挿入されるなどアレンジの妙も楽しめます。フォーレのレクイエムの冒頭部分からフォーククルセダーズの「帰って来たヨッパライ」につながる編曲は笑わせてもらいました。「亜麻色の髪の乙女」も当然ドビュッシーからスタートしています。
題名のない音楽会でユニークな役目を果たしている青島広志が全曲の編曲・指揮そしてピアノ(2曲)に関わっています。12人の編成のアンサンブル1960が伴奏を務めます。ピアノは、様々な演奏活動の場で活躍しているフェビアン・レザ・パネでした。
合唱隊は、ソプラノ、アルト、テノール、バス各パート2人ずつの編成です。若き声楽家集団といいましたが、ソプラノに澤畑恵美さんが参加していたのですね、これには驚きました。他のメンバーもその後クラシックを中心に様々な音楽ジャンルで活躍されています。当然、アンサンブルの力量は圧倒的な凄みをもって伝わってきます。豊かな声量と伸びやかな発声ですので、心地よいハーモニーとなってかえってきました。
これくしょんシリーズ ジュディ・オング・しんぐるこれくしょん Columbia Years 1966~1972
ジュディ・オングのデビュー曲「星と恋したい」から1972年までのコロンビアから発売した全シングルコレクション。デビュー曲では、若さあふれる素晴らしいファルセットを聴かせる。「バラの花嫁さん」では中国語が所々に入り、日本語との絶妙なバランスでエキゾチックな楽曲と見事マッチした摩訶不思議さで面白い。
1960年代後半ということでGS歌謡路線の曲も多いが、一貫して彼女の歌は一つ一つの言葉がハッキリと聴き取れて、とても聴きやすいしおまけに抜群の歌唱力ときているので文句なし。彼女の若さが前面に出ているが、それにしてもどの作品も素晴らしい。欲を言えば、是非ともオリジナルアルバムの復刻を出来るだけ早い時期に実現してもらいたいものである。珠玉のシングルコレクションに乾杯! ジャケットも最高。
巡礼 (新潮文庫)
所有している土地の隣家がゴミ屋敷になりかけている。
家の主とは、コミュニケーションが成り立たない。
困っている。これは現在、実際に我が身に起きていることである。
そんな中、この小説を読んだ。
読んでも、現実の問題の解決には、役に立たない。
でも読んで本当によかった。
どうよかったのかというと、
現実を見る視点が今までと違ってきた。
私も大いに困っているが
相手もずっと何かに困り続けて来たのだろう。
そう感じると、こちらのいらだちや怒りが
少し和らぐ。
読むものの精神状態を変えてしまう。
文学は偉大である。