紫禁城―清朝の歴史を歩く (岩波新書)
紫禁城にまつわる清の歴史を、皇帝と建物の両方を軸に語っていくという趣向。清の通史ではないが、紫禁城の建物はもちろん、北京入城以降の歴代清の各皇帝の事跡を知るには良い本だ。ただ、後半第4章以降は中公の「西太后」を読んだ方が面白い気はする。
男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎〈シリーズ第32作〉 [DVD]
出来の良い作品が少なかった寅さんシリーズ第18作から第37作の時代において、この「口笛を吹く寅次郎」は「あじさいの唄」と共に非常に完成度の高い作品だと思います。住職代行に収まってしまう寅次郎のおかしさもさることながら、松村達雄の住職や長門勇の旦那、関敬六のタクシー運転手など高梁市の寅さんを取り巻く人々が実に良いです。中井貴一と杉田かおるの恋も中途半端には描かれていませんし、御前様の煩悩のシーンなども笠知衆の名場面です。最後、柴又駅で竹下景子扮するヒロイン朋子に結婚を迫られながら、逃げ腰になってしまう寅さんのパターンは、名作「あじさいの恋」と共通項が有りますね。安心して笑える寅さんシリーズの中の名作です。
男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく〈シリーズ第21作〉 [DVD]
木の実ナナは、リリー役の浅丘ルリ子に匹敵するキャラクターだと思うのだが、レビューのシーンが強すぎて、与える情感の乏しいマドンナになってしまったように思う。一方、武田鉄也は、寅さん顔負けのふられ役が板についていて最高。ただ、変な効果音は余計か。
超級龍虎娘 (1) (まんがタイムKRコミックス)
とても嫌みのない萌え4コマ漫画だなあと思いました。
たとえば「今晩の夕飯なんにしよう」みたいな生活や家事のこと、「そんなこと考えてるんだ」みたいな察しや思いなど、どれもこれも他愛ない誰もが日々抱いては霞れてく。エピソードの大元にあるものが、萌えキャラとしてのお約束よりもまず人としての発想なんですね。そこに好感を抱きました。
売れないエロ漫画家といういかにもオタ受けしそうな設定の主人公・藤堂春希。エロいことを考えて食っているにもかかわらずその手のことには純情で理性的、恋愛的な事柄にもおそろしく鈍感という矛盾上等のお約束を維持しつつも、時折垣間見せる仕事に対する真剣な態度、相手に対する深い配慮など――。
萌えとかお約束、ギャグなどの読者が暗黙に欲求する単純なこと、単純でないと効果のないものは女性らしいフィルターで濾過し涼やかに盛りつけて、単純には済ませられない、済ませちゃいけない事柄、たとえば生き方とか人の気持ちとか、そういう作者の伝えたい大事なことはやわらかく分別。お菓子と洗剤は別の袋、みたいにね。
「超級龍虎娘」で良いなと思うのは、かわいらしさと、面白さだけでなく、生活者視点の人間味があるというところですね。ヒロインは龍娘とか虎娘で押入れの巻物から現れ押しかけ共同生活だというのにヘンな話ですけど。
燃える心を~ヴェルディ・アリア集
彼は確かにいい声だし、高音域も素晴らしい。「おお、申し訳ない・・・」でのラストの高音の伸ばしは凄いものがある。しかしいかんせん声量がなさ過ぎる、完全なオペラのアルバムなのにもかかわらず、いかにもマイクを通しましたというような音になっているし。アイーダ、トロヴァトーレ、運命の力などは、彼の声質にまったく適さない。
こうやって聞いてみると、クロスオーバーのアルバムを出していったほうがいい気がする。しかし、この企画に取り組んだという勇気は評価したい。そして、メータにも。