マイルス・デイヴィス青の時代 (集英社新書 523F)
著者のマイルス新書シリーズの第1作。私は本書を読むのが最後になったが、やはり年代順に本書から読み始めるのが望ましい。なぜなら、第2作以降では年表の不在が気になったが、本書冒頭に1926−91の年譜があるではないか。第2作以降もこの年譜を参考に読み進めるべきだろう。
ピカソの青の時代に相当するマイルスの青の時代として、著者はマイルスの生い立ちからアマチュア時代、プロ・デビュー、演奏スタイルの確立、アレンジャー/オーガナイザーとしての卓越した才能の開花の足跡を辿り、同時に至高の傑作カインド・オブ・ブルーに至るまでの数々の名盤(ディグ、ウォーキン、バグス・グル―ヴ、ラウンド・アバウト・ミッドナイト、マイルス・アヘッド、サムシン・エルス等)を名盤たらしめている秘密を探る。そして、この時代のマイルスと多くのモダン・ジャズの巨人との交感やケンカ・セッションの真相等も丁寧に明かす。
ジャズのどの作品を聴こうかと迷ったら、マイルスを聴くべきであり、ジャズ入門者はもちろん、40〜50年代のジャズに詳しい人にとっても新たな発見がある好著だ。
ケン・バーンズJAZZ [DVD]
昔のJAZZの写真とか映像なんかそんなに残っていないんでしょうが、よくぞこれだけ集めて、10枚のDVDにまとめたもんだと感服します。そういった意味では、これはケン・バーンズさんの偉業であります。
しかし、私を含めてJAZZという音楽そのものを楽しみたい人には辛いものがあります。例によって解説やらインタビューが映像のそこかしこに散りばめられて演奏が分断され、まともに音楽そのものを楽しむことが難しいのです。JAZZの歴史やミュージシャンの人となりに興味のある方にはお勧めしますが、演奏をタップリ楽しみたいかたには不向きのDVDといっていいでしょう。
とはいえ、JAZZのドキュメンタリーとして割り切れば、これはこれでナカナカ見応えがあるようにも思えます。(何たって全巻で18時間近くありますから)
なお10枚のDVDの内容は次のようになっています。(カッコ内は英文タイトル)
第1章:ニューオリンズ/人種と音楽のるつぼ (Gumbo)
第2章:天才の出現 (The Gift)
第3章:ジャズ・エイジ (Our Language)
第4章:大恐慌とジャズ (The True Welcome)
第5章:スイングの黄金時代 (Swing: Purs Pleasure)
第6章:カンザス・シティ・ジャズ (Swing: The Velocity of Celebration)
第7章:第二次世界大戦下の混迷 (Dedicated to Chaos)
第8章:ビバップと高い代償 (Risk)
第9章:モダン・ジャズの巨人たち (The Adventure)
第10章:ジャズとは何か? (A Masterpiece by Midnight)
スイング・スワング・スインギン
このアルバムを聴くとアルトサックスの音ってこんなに気持ちよかったんだといつも再認識する。この時代のA・ペッパーの音なんかどうにも苦手なんだが、かたやJ・マクリーンのアルトの音は力強く歯切れもよく聴いてて爽快な気分になり、実に気持ちがいい。
どの曲もそうだがとくに1は単刀直入のメロディが入ってくるあたり「サキコロ」を思わせたまらない。「レフト・アローン」や「クール・ストラッティン」等、この人はサイドのまわっての方が有名な気もするが、間違いなく本人名義での代表作としてこの作品を薦めたい。
Daily Warm-up Exercises for Saxophone
音楽教育者としても有名だったJackie Mclean 氏の教則本。
Major Scale, Harmonic Minor Scale の2種の音階と
Major Chord, Minor Chord, Augmented Chord, Diminished Chord
の4種の3和音を、それぞれ12のキーで
半音ずつ上がったり下がったりするだけの
一見なんの変哲もない内容。
しかし間違えずにすべて吹ききることは意外と難しい。
彼の生徒にはまずこれを暗唱させたという。
これをすべてスラスラと吹けるようになる頃には
サックスの演奏能力は相当なものになっているに違いない。
タイトルにあるとおり
練習時に必ず行うウォーミングアップとして最適と思う。
なお"Bluesnik" と"Dig" の2曲の
Jackie Mclean のアドリブ・コピー譜も収録されている。