ドロミテ夢紀行―南チロルへのいざない
まず素晴らしい写真に惹かれて手にした本書。ドロミテ連峰、ヨーロッパアルプスの一角に佇立する石灰岩の岩峰群、そのドロミテは何処に、そしてそこには何が…。本書は著者が永年の南チロルとドロミテ山麓通いを一つの旅程にして集約したフォト紀行。初めて憧れのアルプスを訪ねてみたい初心者にも、シャモにやツエルマット、グリンデルヴァルドなどは終わって次のステージを模索しているアルプストレッキングマニアにも、是非お奨めの一冊です。
イラストクワイ河捕虜収容所―地獄を見たイギリス兵の記録 (現代教養文庫 1109)
著者はもともと画家であったので、日本軍の捕虜になったときの体験を、自らの文章とイラスト・それに添えた説明のコメント(→当たり前だがこれが「英語」なので妙にリアリティが有る)によって編まれた本である。
文章だけで読むのと違い、かなりひんぱんにイラストが出てくるので、ときどき息をのむ場面もあったりする。
栄養不足と不衛生のため皮膚病になった仲間たちの、大きな「穴」があいた身体や、脚気のために異様にむくんだ下半身。日本軍に「あぐら」で座ることを強要されるため、いつのまにか“猫背”“ガニ股”の日本人そっくりの姿勢になってゆくイギリス兵のみじめな姿。
なにせ、経験した本人が描いているので、イラストの1ページ1ページが、リアルである。
文章も読みやすいが、やはり、数多くのイラストによって与えられるインパクトは大きい。
クワイ河収容所 (ちくま学芸文庫)
日本軍のためにジャングルを切り開いて鉄道を敷く。わずかな食糧で過酷な労働を強いられる英国人捕虜たち。逆らって処刑される者。病んで「死を待つ小屋」に捨て置かれる者。戦争捕虜の扱いにおいては、どこの国でも虐待があってあたりまえかも知れない。しかし生き地獄と化した収容所の中で、静かに奇跡が始まる。自分に絶望し、人間に絶望するなかで、人間を超えた偉大な存在に向かっての模索が始まる。ひとりの捕虜仲間の親切。一冊の聖書。こころを通わす会話。死に行く者がもうひとりの死に行く者を心にかけて、自分にできるほんのわずかなことをし始める。「竹やぶ集会」が建物のない教会となり、大学となり、そこに希望を持ち続けてけなげに生きる崇高な人々のコミュニティーが出現する。とくに彼らが捨てられた日本軍負傷兵の介抱と治療にのりだす場面は驚きである。これは小説ではない。史実である。著者アーネスト・ゴードンは後にアメリカに渡り、プリンストン大学の教会牧師を長くつとめている。彼の中には日本人を責める思いは感じられない。人間がどこまで堕落して残酷になり得るかの記録であるとともに、人間が最悪の情況にあってもどこまで高潔な生き方を見つけ得るかの記録でもある。
クワイエットルームにようこそ 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]
意外に好きになってしまいました。
ちょっと苦手かもな〜、なんて思いながら手にしましたが、ところがどっこい非常によかったです。笑えたし、面白かったし、考えさせられるし、プチダークだし、見終わってすぐ忘れちゃう類の映画ではなく、残る映画でした。
「17歳のカルテ」を思い起こさせる映画です。アンジェリーナ・ジョリーの怪演がインパクト大の「17歳のカルテ」でしたが、クワイエットでは同様に蒼井優さんがものすっごい存在感を見せています。蒼井優さんを観るだけでも、一見の価値ありです。
それに負けず劣らず内田有紀さんのはじけっぷりもよかった!
おかしくて笑っているはずなのにふと泣いちゃってる自分に気づく、といったような、不思議な感覚が味わえる映画でした。
邦画の面白さってこういう作品にあるような気がします。