図説 満鉄―「満洲」の巨人 (ふくろうの本)
満鉄のインフラ整備を中心に書かれています。確かに、満鉄は一種の国策企業ではありましたが、中国人に対して悪行を働くどころか、高速鉄道網敷設、炭坑開拓、ホテル開業、病院や学校開設など、さまざまなインフラを気候・環境の遥かに異なる大陸に創造し続けていたのであり、それらの記録が本書に克明に記されています。本質的にそれらは現在へ一部継承され、中国の人たちは80年以上経った今も満鉄が遺したインフラの恩恵にあやかっているのです。"あじあ号"の高速鉄道技術の一部は戦後新幹線技術に還元され、21世紀に生きる我々にも多大な遺産を残してくれました。本書を読んだ方は満鉄の偉業を知って驚かれると思いますが、胸を張って讃えて欲しいと思います。
文章のみがき方 (岩波新書)
この手のハウツウものは教条主義的な説教的なものが多いなかで、想定外でスラスラと読めた良書である。数多くのコマ切れで構成されているので寝る前に少しずつ読むのに好都合だった。その割に時間がかかったのは、考えながら読んでいたからだろう。数多くの作家の文体を引用することから各章をはじめ、続いて解説するという文体形式は、「使える」なあと思いました。引用された作家に対する好みは分かれるにせよ、幅広い読者に対応できる内容であると思われる。「いやな言葉をつかわない」「抑える」「低い視線で書く」などの精神論も参考になった。品格のある文章をかかねばと思う。。。
フクロウ ─ その歴史・文化・生態
体幅・顔面が広く、眼が大きく脚は太く短い。夜行性で音もなく飛ぶ、そんなフクロウに魅了される本である。最も知られている鳥であり、また最も知られていない鳥でもあるフクロウに序文から最後のページまで魅了される。
学校近くの田園で、少年が瀕死のフクロウに遭遇する。銃か罠か、人間に傷つけられ救いようのない重態で、七転八倒の悶え苦しむ姿を見せずに、フクロウは苦しみに耐えて静かにゆっくりと死を待っている。どうしようもない悲しみの中で、その苦しみを終わらせる為に少年はフクロウを死なせる。
序文であの時のフクロウに対する償いの気持ちでこの作品「フクロウ」を書いたとある。
控えめな学術書のような落ち着きのある表紙に惹かれて、特に鳥類や動物に興味関心がある訳でもないが読みだしたら一気呵成に読み終えた。今まで自分の生活に何の関わりもなかったフクロウに魅せられた。フクロウ、その歴史・文化・生態等々について、ひとつひとつの知識を得て、ぐいぐい引き込まれ楽しく読みました。
ワシミミズクというフクロウは体重3000g、翼を広げると175センチにもなる。サボテンフクロウは40g、体長14センチと小さい。ピカソの絵画「籠の中のフクロウ」、イヌイットのアーチストの「太陽のフクロウ」のリトグラフなど忘れられない印象的な作品を含め、カラーモノクロの図版写真が圧倒的な迫力で多数掲載されているが楽しい。