日本合唱曲全集「祝福」木下牧子作品集
どの曲も音程が正確で、各パートがよく聞きあって和音を作っているのがわかりました。難しい転調も、その調がもつニュアンスに合わせてハーモニーの色彩が変化し、すばらしいと思います。曲によって編成を変えたのだと思いますが、小さなアンサンブルは透明感が際立ち、大きな編成の曲は厚みが感じられました。各々のメンバーの方の実力が高く、その上感情に流されずよく抑制を聞かせているところに好感をもちました。日本語の意味に応じたフレージングもすばらしい。一部だけですが、アルトの声の濁りが目立つ曲がありそこだけが残念です。
マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)
ナビダード民主共和国大統領であるマシアス・ギリ。
彼がどのように(20世紀経済中心社会によって)形作らたか。
そしてどのようにその人らしい一個の人間に戻っていったか。
夢幻の世界にも旅立ちながら描いた作品。
人間の一生は様々なことがらが交じり合って、まるで操られるように自分の役割を果たす、
それはまさに運命としか言えないようなものなのかも知れない、と読んで思いました。
最後まで読んでとても悲しかったです。
南国に純和風の場面が出てくるところとか、メルチョール島の昔話に出てくる怪物とか、なんだか印象に残っています。
終わってしまうことが残念だったから星一つ減りました。
スティル・ライフ (中公文庫)
『スティル・ライフ』と出会ったのは高校生の受験勉強の時でした。現国の問題集の問題としてとりあげられていて(抜粋は雪のシーンだったと思うけど)、その文章を読んでその清清しい新鮮さ、文体の透明感に感動し、完成された小説として今すぐ読みたいという思いに駆られ、勉強の手を止め夢中で本屋までその本を探しに自転車で走りました。受験勉強中ということもあったのか、関係ないのかは不明だけど必死に本屋で見つけて読んだ文庫の『スティル・ライフ』はすごく心を潤してくれました。読んでいる途中も読み終わった後も喉だけでなく、精神的にもまるで清らかな水で癒されたような錯覚がしました。今もその時初めて買った文庫本を持っていて、(8年も前に買ってもうボロボロになっているけど)毎年2回くらいは読み返しています。何十回読んでも毎回新鮮な気分にさせてくれます。
祝福/木下牧子:無伴奏作品集
現合唱愛好家なら、一度は聞きたい一枚!声楽経験者で固めたようなゴツゴツとした感じは無く、非常に声が馴染んでいて心地よさを超えた感動がある。価格帯からはおよそ想像もつかない完成度の高い演奏で、伸びやかな発声と安定感たっぷりの音程、全体の音楽構成が素晴らしい!もはやアマチュアとはいえないレベル。
木下牧子混声合唱作品集
「ひょうひょうと、笛を吹こうよ・・・」で静かに始まる、本当に叙情的な歌です。川面を流れるヒメマスは我々自身でしょうか。この作品は、全楽章とも『絵画的』なんですね。1曲目の盛り上がりの「ガラス細工の夢でもいい、与えてくれと。失った無数の望みのはかなさや、遂げられたわずかな望みの空しさが、明日の望みも空しかろうと笛に歌っているが・・・」の部分は、本当にジーンときます。
2曲目の木馬、3曲目の「この夕べ・・・」ではじまる本当に夕日をバックに歌うべき佳作。そして最後の5拍子の「空を渡れ、碇を上げる星座の船団!」では、激しいピアノのパッセージに乗せて希望への賛歌が堂々と歌われる・・・。このコラムを読んでいる人で、合唱団に所属して全日本に出た経験のある人はいますか? この曲はいまだ一度も歌われていません。1曲目と最終曲を浪々と歌い上げれば、相当の賞がもらえると思うんですよね・・・。