D S Al Coda
81年発表の3rd。81年にアラン・ゴーウェンが白血病で亡くなったため元メンバーが追悼の意味を込めてグループを再編して発表した作品。一曲を除いて全曲が79年から病気で亡くなる直前の81年までに書かれたアランの手によるものである。(5.のみギルガメッシュの1st用の曲であり、2.もギルガメッシュの2ndにも収録されている。) 各曲はきちんとスコアにまとめられていたらしく、ほとんど手直しせずに演奏して本作に収録されている。したがって従来の彼ら作品と比べると比較的カチっとした演奏がされており、洗練されたフュージョンのように聞こえる曲も多い。インター・プレイで膨らませた曲もないために最も長い曲でも6.の9分弱となっている。またデイヴのプレイは特に音色については既にブラフォードに近いものになっている曲も多い。ドラムスも一部はエレ・ドラになっている。
アラン・ゴーウェンはこのグループのリーダーでもあり、象徴のような人でもあったが、スタジオ録音時には正式メンバーとして残っておらず、実質的にはデイヴ・スチュワートが仕切っていた。したがってこのアルバムは本来のナショナル・ヘルスの音楽性を具体化したものとも言えるが、実質的にはナショナル・ヘルスとは似て非なるものだと思う。素晴しい楽曲と流れるような演奏は無論の事カンタベリー・ミュージックの一つの頂点であることに変わりはないが。
メンバーは2ndのメンバーのフィル・ミラー(g)、デイヴ・スチュワート(k)、ジョン・グリーブス(b)、ビップ・パイル(Dr) の4人に加えてリチャード・シンクレア(vo)、アマンダ・パーソンズ(vo)、バーバラ・ガスキン(vo)、ジミー・ヘイスティング、エルトン・ディーンら管楽器奏者も加わっている。
Of Queues & Cures
「クール」という言葉につきるのだろうな、と思います。70年代後半、英国ロックにとってパンク出現という激動の時期に、これだけ「わが道をいく」作品を制作した勇気を称えたくなります。いわゆるジャズの魅力はインプロビゼーションのスリルだと思うのですけれど、彼らは全く異なるジャズの姿を提示しています。複雑な曲構成、奇怪なリズムの中を、ギターやオルガンがソロを交代しながら、ゆるやかに曲想が展開していきます。リフレインは必要最小限。油断していると、あっという間に違う曲になっています。変幻自在とはこのことです。
水先案内役はキーボードのデイブ・スチュワート。ユーモアを交えて、けして悲壮にも深刻にもならずに進んでいきます。ギターのフィル・ミラーは英国ジャズロックの生き証人とも言っていい人物。彼のブリブリとした粒立ちのはっきりしたギターは、一度聞くと脳に刷り込まれてしまう魅力があります。
National Health
イギリスのジャズロックバンド、ナショナル・ヘルスのアルバム。1978作/紙ジャケリマスター盤
Hatfield and the Northのデイヴ・スチュワートとフィル・ミラー、GILGAMESHのアラン・ガウエンを
中心に結成された、まさにカンタベリーシーンのスーパーグループともいうべきバンド。
軽快なリズムの上を、デイヴのオルガン、ガウエンのシンセが鳴り響き、テクニカルなインストを聴かせつつ
途中にはしっとりと美しいピアノに女性ヴォーカルも入ってきたりと、展開力も見せつける。
クラシックの要素もあったEGGをさらに優雅に繊細にしたという雰囲気もあり、
ジャズロックとしての名作という以上にメロディアスな美しさがあるのが素晴らしい。