夢みる機械
川上未映子としての芥川賞受賞及び候補作に感じ入るものがあったので、自ら作詞を手がけていた本CDを購入しました。全ての作品の完成度が高いと言えなくとも、心・魂に響くメッセージとその歌声に魅かれました。
声の色や質感や響き、歌詞が合うかなんて個人の趣味の問題で、単純に好きか嫌いかですが、歌声を聞いたときに、初めて千住真理子さんのコンサートでヴァイオリンの音色を聞いた時のような、これまでにない音に出会った感動を覚えました。
「愛をもっと」、「初恋」、「千と一夜の軌跡」「悲しみを撃つ手」は聞き応えがあると思います。但し、「悲しみを撃つ手」はアルバム「頭の中の世界と結婚」の方が完成度が高いです。
すべて真夜中の恋人たち
雑誌ですごく紹介されていたので期待大でしたが、、、うーむ。
川上作品で好きなのは、カギカッコの一方的な哲学感が好きです。
今回も主人公の友達(主人公の対比相手はいつも美男美女)の暴走する/思考が止まらない人のわたしぶし炸裂
「うつくしい、かわいい、ださいなどは自分でかんがえていないこと すでにだれかが考えたこと
唯一恋愛は、自分の本能 自分だけの感情」的な事はなるほど とおもえました。
ヘブンの方が好きかな?
他の方もおっしゃっていましたが、主人公魅力ないですよね
世の中の大半はきっと そんな人ばっかだし 自分もそうなんだなとも思えます。
わくわく感やこうよう感ってみんな好きだと思うのに 最近の小説は排他的な事ばかりで夢がない
ヘヴン
「したら罪悪感が芽生えるからか?じゃあなんで君には罪悪感がうまれて、僕には罪悪感がうまれない?どっちがまっとうなんだろう?」
この作品の百瀬というキャラクターはすこぶる格好いい。
他の方も書いているがそれこそ『カラマーゾフの兄弟』のイワンのような《理論こそ全て》といったような態度は「お前、絶対中学生じゃねえだろ」とツッコミをいれたくなること必至。だが、こんな風に世の中を達観している百瀬はおそらく《死》を常に傍らにあるものとして生きているのだろう。故に、体育に出れず、常に咳をしていて、体を激しく動かすようなことはできない。
「地獄があるとしたらここだし、天国があるとしたらそれもここだよ。ここがすべてだ。そんなことにはなんの意味もない。そして僕はそれが楽しくて仕方がない」
本音かどうかは兎も角として、彼のこの思想は《ヘヴン》を信じるコジマの考え方と真っ向から対立する。
弱肉強食の原理で動いている社会で生き残るためには強くなければいけない。
そこに善悪の概念など必要ない、むしろ邪魔なものだ。
だから、強くなればいいんだよ、というのが百瀬の考え方。
しかし、コジマは弱肉強食の原理だからこそ、弱いものが絶対に生まれるシステムだからこそ、誰かの代わりに率先して自分が弱いものになることが現世での《試練》であり、それを乗り越えることで自分の大好きな絵のような人と人が完全に判り合い、愛し合える世界、《ヘヴン》に行けると考えている。
だから、同じ《試練》を乗り越える仲間であった“僕”が「斜視を治すことができる」という話をした時、悲嘆し非難する。
「わかっていたんじゃなかったんだね」と。
まぁ、それはそうだ。
コジマは実は金持ちの子どもであり、体を清潔にしさえすれば、身なりをきちんとしさえすれば、いつでも弱者から脱出することはできたのだから。
「あえて」弱者でいたコジマと「望まないのに」弱者でいた“僕”は決定的に違ったのだ。
僕の人生は「一万五千円」で変わることになる。
コジマとの絆、母との絆を立ち切って、目の前に広がる景色はただただ美しいものだった。
百瀬の言うとおり、世界は残酷で、“僕”もそのシステムに飲まれ、斜視を治し、学校をやめて、弱者ではない生活を送ることになるだろう。
罪悪感もなく。
故に、二度とコジマとも会わないし、会えない。
悲しいラストは、“僕”にとっては幸せなラストでもある。
それがまた、悲しいのだ。
うちにかえろう~Free Flowers~
少し前(と言っても約3年)に、NHKのCFに使われていた曲でした。 プロジェクトXにかぶせたCFだったので、もしや「中島 みゆき」さんの新曲か?と思ってCDを探した記憶があります。
ハスキーで声量もある、実力もありそうなのに、新作が出てこないですね、ちょっと気になります。
パンドラの匣 [DVD]
原作は読んでいないのですが、近年多い太宰作品の映画の中では、
後味がスッキリしていて好きです。
「正義と微笑」を読まれた方なら分かると思うのですが、
太宰作品には青く透き通った読後感がある青春物もあり、
この作品もしかり。未成熟だとしても、みずみずしい。
物語は、主人公ひばりが結核のために入った療養所での日々。
自我、友情、恋愛、病死…そして少年の成長。
最終的に、友情や恋愛は壊れてしまうかと思いきや、
ちゃんと「希望」があるんです。
そこが後味スッキリのポイントかなと。
重い太宰作品しか知らない方も、楽しめると思います。
「正義と微笑」も映像化されないかな…。