夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
本書の良さについては多くの方が書かれているので、別の面から書いてみたいと思います。
この独特な文章になじめるかどうかで評価は大きく別れてくるでしょう(これもすでに指摘されている方がいますが)。
わたしはなじめませんでした。
その具体的な箇所をいくつか挙げてみます。
ネタバレ注意。
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私の手なんぞ何の面白みもありません。紅葉饅頭のほうが断然可愛いに違いないのです。 p.22
私は頬が火照るのを感じましたが、それは酔いのためではなく恥じらいのためでした。豆ッ恥、豆ッ恥。 p.47
しかも私が中学生の頃から欲しかった本が、百円玉一枚だとは! お財布への信頼に一抹の翳りある我々にとってはありがたすぎるお話です。ビバ、「ビギナーズラック」。それとも私は古本市巡りの才能があるのかしらん。私の興奮はいやが上にも高まります。 pp.81-82
そして樋口氏から、彼女がその絵本を追い求めて古本市をさまよっていたことを聞いた刹那、「千載一遇の好機がついに訪れた」と直感した。今ここに一発逆転の希望を得て、ついにふたたび起動する私のロマンチック・エンジン。 p.117
なぜ先輩はあんなに驚いたのだろうと私は思いました。私の顔に何かオモシロオカシイものが? p.138
この先どんなオモチロイことが私を待ち受けているのであろうか! と我が興奮が天井知らずに高まるのも宜なるかな。 p.156
もちろん私は普段から精神を研ぎ澄ましているような人間ではありませんが、その「ボーッ」は、「ボーッ」の中の「ボーッ」、「世界ボッーとする選手権」というものがあれば日本代表の座も間違いなしと思われるほどに筋金入りのボーッであったのです。 p.228
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こういう文章に違和感を感じなければ読んで損はしないはずです。
いずれにせよ、購入する前に一度立ち読みしてみてください。
10ページも読めば雰囲気がつかめると思いますので。
舟を編む
「硬派な内容の本」との勝手なイメージを持って購入したため、読み始めて、その違いに、正直、戸惑った。
納得のゆく辞書の完成に向けた編集部の様子が、10年以上の時を隔てた二部構成で描かれているのだが、時の経過の「重み」、「苦労」、「苦悩」のようなものを、もう少し厚く描いてほしかった。
本と向かい合い、じっくり読む読書家には、少々物足りないものと思う。
気軽に読める作品である。
神様のカルテ スペシャル・エディション [Blu-ray]
原作では、 漱石オタクの内科医イチと、その妻でプロカメラマンのハル、そして御嶽荘の奇妙な面々とのやりとり、
地域医療、週末医療の在り方等が、丁寧に描かれていたが、
映画では、他の方が言われるように、かなりの駆け足で、原作をなぞっていくため、
既読者でも脳内補完しないとキビシイ状態。
そして、 原作では、古めかしい言葉遣いで、テンポの良い皮肉や受け答えをするイチが、 映画では、ただの丁寧語をボソボソ喋るキャラだったのにはガッカリ。
これは、櫻井翔の演技云々より脚本の問題か?
宮崎あおいの演技は、さすがだが使用しているカメラがオリンパスだったのでキャスティングに大人の事情を感じてしまう。 因みに原作で愛機はライカ。
まぁでも、単純にエンターテイメントとして観るなら、それなりに楽しめます。