岡本かの子 (ちくま日本文学)
戦前に書かれたとは思えないほどの新しさである。
短歌などは、サラダ記念日などを書いた女性歌人よりよほど突出している
歌人、詩人である。
小説も短編に切れ味するどく、突然40歳くらいから書き始めたということだが、
天性の才能を感じさせる内容である。
そしてエロティックな印象を行間に漂わせてもいる。
かの子撩乱 (講談社文庫 せ 1-1)
最初かの子や一平の内面まで迫りぐいぐい読ませるのですが、欧州滞在時は資料が少ないのか事実の列挙で中だるみぎみになります。
綿密に取材されていますが、文学的感動はいまいちでした。岡本家を知るにはよい本だと思います。
この本の後、岡本かの子の「鶴は病みき」と「母子叙情」を読みました。「母子叙情」に出てくる岡本太郎はとっても魅力的でした。
老妓抄 (新潮文庫)
言わずもがなではあるが、小説は時代を切り取って、その時代を表現する言葉を利用した芸術だろうと思う。
本書は、まさに作者の生きた時代を表現し、読者の前に見事に現出させる言葉の魔術師だ。
彼女にしかできないやりかかたで、きっちりとその時代の風景が見えてくる。
そんな作品群を鑑賞して、在りし日の日本に思いをはせる。
心の贅沢が得られる良書である。