10年大盛りメシが食える漫画家入門
雑然としたまとまりのなさは感じるが
知識量は豊富でこれ単体で読んでも損のない面白さだ。
役立つ知識は多い。
タイトルが漫画家入門であるので当然ではあるが
前作と比べると漫画家志望者に限定した内容が多いので
絵の知識のみを求める場合は役に立たない部分も多いだろう。
よって、プロ漫画家志望者なら★★★★★
素人絵描きの参考書としてなら★★★
10年メシが食える漫画家入門 悪魔の脚本 魔法のデッサン (アフタヌーン新書 9)
まずは女の子が男の子に恋をさせるようなキャラ主導の脚本術からはじまります。
この辺りは小悪魔の脚本術のほうがしっくりくるかも。。。
しかし文章は軽快で読み物として面白く漫画や映画が好きなら誰でも楽しめます。
ジャンプ、マガジン、アフタヌーン等の攻略法も
現役でそれらの雑誌に最近も描いている作家さんならではの
情報で、これらの雑誌で描きたい人には必読でしょう。
特筆すべきは少女漫画攻略についてです。
「男の子は女の子の努力で惚れることはない」が衝撃でした。
そこから男性向けと女性向け漫画のの根本的違いを解き明かしています。
後半は主にパースの話になりますが
これまでに出た多くのパース本では漫画的に不十分だった
「透視法における消失点の正確な位置(角度)の出し方とそれをどうコマに配置すればよいのか?」
つまりパースとしてどこからどこまでが自然に見える範囲なのか?を
視界図(見えている範囲を円と考える)を使って理論的に説明しています。
パースをつけた背景のここから先は絵として使っちゃ駄目というラインを
明確に示しています。
それをコマにあてはめて、応用できるよう考えたのは画期的ではないでしょうか。
キャラクター造形においても
顔面に描くペケポンのあたりにもパースが必要であること、
転がるサッカーボールの回転や空に浮かぶ雲にまでパースがあること、
歪に見える絵の理由、立体を感じさせる光を意識したペン入れ、
構造による服のしわの違いを説明するなど
これまでの漫画技術本より一歩奥深い源流をたどった本ですね。
帯の克亜樹先生の「これは漫画を考えるための謎解きパズルだ」には
そんな意味が込められていると思います。
それでいて技術そのものより追い求める心を!と語る
作者の心意気に敬意を!