吉田沙保里―119連勝の方程式
本書刊行後、北京オリンピックの55kg級で、吉田は2大会連続で金メダリストとなった。
ロンドンにも参加表明し、五輪三連覇を目指すことを宣言している。
世界的な記録を打ち立てる強者とは、どのような心構えで勝負に挑むのかと読んだのだが、あまりにも吉田は普通の女性すぎるとの印象しか残らなかった。
大勝負直前には、集中しているものの、普段は少し天然の入った、野菜の好き嫌いも多く、強いて挙げれば、動体視力や、『ウォーリー』を即座に探せたり反射と動きが直結しているかのような脳が、超人的といったところか。
これでは著者も、さぞ一般的に考えるような勝負師としての挑み方といった当初のプロットを、どう変更するかに頭を悩ませたのではないかと察する。
吉田も栄監督も今後、吉田モデルの後輩選手を創り得まい。
それほど彼女の能力は天才的で、それに山本聖子に負けた頃からの努力が重なり、優秀な選手に育っているのだ。
実家でもある一志レスリング教室、家としての中京女子大、練習を勤務としてくれているALSOKと周囲にも恵まれているのは確かだが、他の選手をどう吉田に近づけるかについての考察についてもっと深く掘り下げて欲しく、☆1減点した。