あのころ、白く溶けてく―安永知澄短編集 (ビームコミックス)
なんというか、こどもの頃そういう光景をみたことあるんだけど
見過ごしてきたよなというような部分に光をあてて、
そこでの感情を丁寧に掬い取ったような作品です。
ああ、あれってそういう意味があったんだなあと
思ったりするような。
意外にあっさり。
載ってるうちの半分はやっつけ感があって今ひとつですけど、
残りの半分だけでも買う価値はあるかと思います。
特にデビュー作(?)「くそがき」は
若さほとばしる佳作、といった感じで突き抜けてて。
浅野いにおとか好きな人には無条件でお勧めです。
ステップ・バイ・ステップ 上 (BEAM COMIX)
階段をテーマにした短編連作漫画集。上下巻の2冊。
天才・安永知澄の本領ここに発揮する、というかたち。
上巻が狂気への階段。高揚します。死の狂喜を感じます。
下巻が現実への帰還。虚脱し、哀愁があり、沈静します。
といったシステムになってると思います。
人の持つ狂気を秘めた作家が、
真面目に丁寧に、ときに戯けて、描いた連作。
狂気の生み出す恐怖を、ゆりかごで味わう上巻です。
下巻も買わないと現実という安堵感に戻ってこれない…かも。
上巻だと上るだけ。落ち着かないとレビューも書けないよ。
ん〜、えっと〜。
ていうか、連載中にも作品ごとのレビュー書いて、
いざ、単行本が出たときに備えてたのに、下巻にある、
あとがき
にて、作者本人が作品の、
種明かし的説明書いちゃってるんだもん。
外野があれこれレビューで言うより、
まず、誰かが、この本を手にとって、
上下巻通して読むべきです。
連載中には、着眼点と発想と、
それらの結末に何度も笑いながら、
床を転がりました。1作1作が珠玉です。連載中、楽しかった。
このためだけにビーム買ってた。毎月、毎月、
また真面目に狂ってるよ!って、言いながら、
一人で読んでました。
もっと周知されたらいいのにな!
やさしいからだ (1) (ビームコミックス)
めちゃくちゃ未完成で、言いたいことがまとまっていない感じすらあるのに、なぜか完成された感じをそれなりに出しているのはすごい。この人のいいところは、百パーセント自分に向けて描かれているということ。誰にもこびず、ただ淡々と自分の中の風景を絵にしているだけという感じがする。メッセージもその中に含まれているのだろうけれど、我々の現実がそうであるように、そう理路整然としたものでもないし、百パーセントの肯定でも絶望でもない、それはもっと曖昧模糊としたものである。それを素直に吐き出せるというのは素晴らしい。ある意味、劇的な粉飾を行ったり、象徴的な意味合いと曲ん的メッセージが色濃くなったりせず、独特の調子を伸ばしていって欲しい。