愛人岬―笹沢左保コレクション (光文社文庫)
とにかくド助平なのである。笹沢佐保の小説に出てくる女たちは。
純愛ラブストーリーなんてものではない、愛欲セックスストーリーそのものだ。
主人公・香織は会社の同僚・水沼と愛人関係にある。水沼との不倫旅行中に殺人事件が起き、水沼は容疑者として疑われることに。主人公は愛する男の無実を証明するために奔走するが、しだいに水沼に対する疑念が心の中に生れてくる・・・。
とはいえストーリーとともに、主人公の愛の対象は、水沼自身というよりは男とのセックスそのものに変わっていく。
水沼のペニスを「これを水沼のものだという意識はない」と感じて、ペニスを「X」と名付けて、「Xと別れるのかと思うと辛かった」となるのだからたまらない(笑
笹沢佐保の面白さは、これほどのド助平女でも嫌味に感じさせない筆力にある。主人公の性欲の強さに苦笑いしながらも、どこかしら可愛く感じてしまう。これは他の笹沢作品でも同じだ。
面白いことは間違いないが、三十年前の小説だ。古さは否めない。さらに二時間ドラマっぽい終わり方もいささか・・・
それで★を一つ減らした。