バッハ:マタイ受難曲(全曲)
第1曲は8分29秒。この中庸なテンポを、最後まで貫いている。全曲を壮大なイン・テンポで演奏しているという感じがする(ただし、第1部 イエスの捕縛の後のNo.27、および第2部 No.34-35、51は若干速いテンポ、また、最終曲は遅いテンポで演奏されている)。
歌唱は、テキストの意味が、聴く者に、よく伝わり、また器楽の演奏は、通奏低音とソロ楽器、旋律楽器とのバランスがよく、歌唱・器楽の演奏いずれもバロック音楽のオラトリオ、ことに《マタイ受難曲》に、ふさわしい。なお、歌唱は全員、男声。
テキストの意味が、よく伝わること。音楽の流れが、よいこと。この二つは、この作品の演奏における必要条件であり、その条件を満たすレオンハルトの流麗で中庸な演奏は、古楽器によるマタイの模範である。
1989年録音。