海は見ていた [VHS]
深川の遊郭を舞台にした話です。清水美砂、久しぶりに見たけれど、とても格好いいあねさんでした。気が強いつみきみほ、優しい遠野凪子とそれぞれが個性のある役で、かけあいも面白かったです。あねさんたちが着る衣装も個性的。皆が何かをしょっていて、それなりに苦労も悩みも恋もある。その中で生きていくということの力強さを感じました。お話はわりにたんたんとしている印象ですが、それぞれの人物の気持ちが出ていて心に残る話でした。
海は見ていた コレクターズ・エディション [DVD]
アメリカのビデオ・レンタル屋で見かけました。黒澤明脚本。もし黒澤監督自身がこの映画を作っていたら、どんな作品になっていただろう?などと皮肉な感想がつい浮かびます。でも、本当にアメリカ人はゲイシャ好き。さすがは「蝶々夫人」の伝統か?4年ほど前に、例の映画「サユリ」の原作になった「メモリー・オヴ・ゲイシャ」がボストン近郊在住の著者によって上梓されベストセラーになった事が記憶に新しいです。こちらボストンにはこの本の他にも、本物のゲイシャさんがご自身の自伝のサイン会にいらしたついでに、セイラムのピバデイー美術館で踊りを披露?などという会があり、アメリカ人が所狭しとぎっしり詰めかけていました。だから、こういう映画は国際派です。古き良き日本の姿。それは単に着物にちょん髷じゃない、日本人の美しい心の姿がありますね。
ひたむきに武家の青年を慕う娼妓。青年にとって所詮彼女は自分と同等の人間ではない。「北の国から」の純クンにこの若侍はキツかった。全然似合ってません。却って身分の低い方の男をやらせた方がいい演技になったと思います。多分、市川染五郎なんかがむしろハマリ役じゃなかったでしょうか?名門の男はお嬢様と結婚するのが当たり前。そういう性格の演技が自然に決まったんじゃないかと思います。
そういう意味でも芸者は永遠です。男にとって、美しい清らかな妻とともに、妖しいそして惨めな官能に生きる女は必要不可欠です。古今東西を問わず、芸者はそうした後者を生きる最も美しい東洋の宝石です。
海は見ていた [DVD]
原作山本周五郎→脚本黒沢明→監督熊井啓ときけば絶対に観たくなる。黒沢明は自分で監督するつもりで脚本を書き、絵コンテも描き準備万端。作品をつくる前に亡くなった。さあ。この重たい脚本を映画にする。金は日活が出した。監督は熊井啓であった。役者は僕は全く初めてお目にかかる人たち。
気分いい作品にできあがっている。久しぶりに金をかけた時代劇。今頃の若い奴が時代劇を演じる力があるのかしらと心配していたが、結構やるじゃない。軽薄さはそのままに。ラストシーンの姉さんがすべてを決めるのだが、この女優は残るとおもった。
その女優は清水美砂 。
「雨あがる」につづく黒沢明脚本の映画化。老人監督が実現させている。これでいいのかと感謝とともに心配。
武満徹:エア,弦楽のためのレクイエム
現代音楽の作曲者だから、という理由で武満徹を聴かない人も多いだろう。
そんな人も、せめて「系図」は死ぬまでに一度聴いてほしい。
さぁ、聴いてやるぞ!と身構えると
あまりに幻想的な「やさしさ」に包まれて
気がつけば「言葉と音の贅沢さ」の虜となるであろう。
安っぽい「癒し」の音が氾濫する中で、
これほどまでに贅沢で高級感のある「やすらぎ」を味わえる作品は
そう耳にすることはない。
遠野凪子のナレーションは少々棒読みの感じになるのが残念だが
終楽章の「遠く」では、どこか切なさを感じる雰囲気が良い。