人が人を愛することのどうしようもなさ [DVD]
現場の凄まじい緊張が伝わるドキュメントです。
最後に収録なった喜多嶋舞のインタビューを観ると、心底作品を愛し、作家に全幅の信頼を寄せていると共に、腹の中から自分の言葉で延々と答え続けている姿に感心します。淀みなく、自分の解釈や想いを喋り続ける。
お人形さんじゃないな、生きた人間だな、素敵だな、と思う。
いよいよこんな女優が出てきたんだな、と驚き、また、こういう女優を日本映画界が使えないのなら、
大人のための愛の物語はいつまでも軌道を形成し得ないだろうな、と思ってしまう。
“ノーメイク”で淡々と、けれど眼差し強く答える喜多嶋舞に惚れて、いや、敬愛の念を強く抱いてしまった。
男とかおんなとか以上に、“人”として愛してしまう。
夜がまた来る ニューマスター・デラックス版 [DVD]
『GONIN』や『ヌードの夜』と並ぶ石井隆監督の珠玉の傑作であり、日本映画史上のフィルム・ノワールのなかでもこの3作品は最高級の出来。
録画したビデオしか持っていなかったので、この再発売は有り難かった。
特典のインタビューも長く、見応えがあった。
ただ、この作品は聞き取りにくい台詞がけっこうあるので、画質よりも音質を改善して欲しかったと思う。
名美・イン・ブルー
レンタルショップで、この人の作品のパッケージを見るたびに、いつか原作をみて興味があり購入した。
名美とそれをとりまく環境は、ありえないけど、最後まで、どきどきした。
さらさらした恋愛物語ではないけど、私は、こうゆう世界も素敵だと思った。
ストロード・ロード
世に云う幻の名盤という奴がやはりまだまだ存在するのだなあ・・・・。
相方のBASS,DRUMSも非常に良く三位一体のグルーヴは最近の作品と偽っても誰も訝らないはず。
1978年録音とあるが、当時はかのマイルスデイビスも永い沈黙期(活動休止中)にあり、
フュージョンやロック全盛、日本ではニューミュージックと言われたJ-Popの先駆けがフォークロックから徐々に分化
しつつあった時期かと記憶している。そんな時代にこんな一本気なJazz演奏を残していたとは
驚きであり、実に潔い熱い演奏である。逆にそんな時代の流れに掉さす気概があればこその
ことであったのかも知れない。独学とはとても信じ難いよく詠う指先、流麗なフレーズには唖然
とさせられること請け合いであろう。3枚しか録音がない上、近年まで活動休止していた方
らしいが、近く最新録音も世に出るとのことで非常に楽しみである。
こういう盤をわざわざリマスターして出してくれるレコード会社の気概にも是非、
厚い拍手を贈りたいと思う。流石は澤野工房&ディスクユニオン、これからも頑張ってほしいものだ。
ヌードの夜 ニューマスター・デラックス版 [DVD]
「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」から遡ること17年、1993年の作品である。現在、話題作には必ず顔を出していると言ってもいい余貴美子が注目されるきっかけになった作品でもある。
「愛は惜しみなく奪う」を見た直後でもあるので、正直言ってインパクトには欠けた。いずれも「キネマ旬報」のベストテン作品とはいえ、世間的な評価からすれば「ヌードの夜」の方が高いことは言うまでもないが、いずれも同時代性が要求される作品なのかもしれない。
とっくに鑑賞済みの作品だと思っていたが、改めて見てみると記憶に残っているシーンがない。私自身、働き始めて数年が経ち、映画やビデオの鑑賞数が落ちていた時期だったのだ。
93年といえばバブル経済の崩壊直後ではあるが、まだ社会には余裕があったらしい。村木=紅次郎(竹中直人)、名美(余貴美子)、仙道(椎名桔平)らの愚かさや狂気も、「愛は惜しみなく奪う」のそれに比べればまだまだ甘いという感じ。また、現在の余貴美子と名美を重ね合わせてみるせいか、村木が名美に惹かれていく心情がピンとこない。とはいえ、公開当時に見ていれば違った印象を受けたに違いない。「花と蛇」や「人が人を愛することのどうしようもなさ」を見たときのような肩すかし感はなかった。