死のクレバス―アンデス氷壁の遭難 (岩波現代文庫)
非常に即物的に、しかも逐次的に、登攀中の出来事や行動を記述している。そこに息を呑むような緊迫感が漲る。でもこれは事実の記録なので、虚構の筋書のように読み手をじらす要素はない。清潔な緊迫感だ。
「私は生まれてはじめて、人びとや社会から切り離されていることが実感された。静謐と安らぎの素晴らしさ。完全に自由な気分―どんな方法であれ、自分がやりたいことをやりたい時にする―その意味が感じられた。(中略)生き生きとした自立心が身内から湧いてきて、無気力さを押しやってしまう。今や、自分自身以外誰に対しても責任を持つこともないが、われわれの行動を妨げたり、救助しに来るものもいない…。」(12頁)
登山者を捉えて放さない独特の心理を見事に言い当てている。と同時に、ごく限られた高度な登山者にのみ当てはまる高みにまで、引き上げられていると思う。
生きるために危険を必要とする人達がいるのだ。
事故の核心部分の記述は恐い。PG-13指定の映画の流血場面などよりよほど恐い。文字だけなのに状況の残虐さが生々しく伝わってくる。冷徹な筆力の成せるところだと思う。書ける人なのだ。
読後感が頭にこびりつき、日々の暮らしの中で何をし何を考えていても、意識が不意に本の世界に、あの凄惨な戦いの時間に、連れ戻される。本から影響を受けたのだ。
彼等にとって死とは明白な概念だろう。生の意味するところも、死に打ち勝っていることと定義してよい範囲では、明白だ。
山岳遭難という極限の状況と、しらじらと冴え渡ったメンタリティが、もつれやすい概念を整理し、人間の存在の核心の意味を明白にして言語化してくれたと思う。序文の筆者が古典だと言うのに同意する。
J.シンプソン『死のクレバス』
岩波現代文庫
2000年11月16日 第1刷発行
2009年2月5日 第6刷発行
エントランス [DVD]
こんな真ん中にエリザ・ドゥシュクいたら主演と思いますよね。…しかし、主演の女優さんは左端の人でした。エリザはその親友役。そして、ジャケットの売り文句には『エリカ・ドゥシュクが魅了する…』、、誰も気付かなかったのでしょうね…なんかファンとして切ないです。 映画の内容はB級かなと思いきや、A級とは行かないですが、なかなか面白かったです。ハラハラもしたり、最後は『あ〜!』ってなったり… 悪女で悪友なエリザを見れたので、買って損はなしでしたV(^-^)V踊ってるシーンもお勧めW 一部のキスシーンではハッとしました(笑f^_^;) 私としては満足八割映画でしたか、熟達した映画通の方には物足りないかもしれません。 …ジャケットにでかでかとある、アップの目だけの人は誰だったんでしょうか?謎です(笑)
東村山の闇―「女性市議転落死事件」8年目の真実
今から10年前に、こういった事件が都内であったことは、まったく知りませんでしたが、
残された遺族や、同じ活動をしていた人の無念さが伝わってきました。
惜しむらくは構成面に、やや問題があり、読みにくくなってしまっていることでしょうか。
同じ事件について書かれた、乙骨正生氏の「怪死 東村山市議転落死事件」も読んだのですが、
こちらと併せて読むと、よくわかりました。
しかし、21世紀の世の中にあっても、こんなことがあるなんて、
何だかとても怖くなりました。