蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
「蟹工船」の中の過酷な労働・非効率性・非衛生的な労働環境の中、監督は漁夫・雑夫達を厳しく働かせるが、やむにやまれず労働者がサボタージュやストライキをしていく過程をいきいきとするどい描写で書き綴られていて、読んでいて圧倒される。会社は会社の命を受け忠実に業務を遂行していた監督を、ストライキを惹き起こした責任をとらせる処分として首を切り、監督は会社に裏切られたという忸怩たる思いをしなければならかった、これは現在でもかわっていないと思います。「党生活者」は、地下生活者として活動し続ける著者の命がけの闘争の記録で、帝国主義日本で何か発言したり主張しようとする人間が、なぜ地下生活をしなければならないのか、考えさせられました。現在は表現の自由はあるものの、会社の論理に個人生活は組み込まれ、人間的生活ができない状況はかわらないと思います。筆者の時代の記録を参考に、現在を生きる私たちはこれから何もすべきなのか、自分に問うべきだと思います。
蟹工船WORK SONG BOOK~日本の労働歌集
このCDの曲をよく歌った。党派・関係なしに歌われたものもあるし、その党派だけの歌もある。しかし蟹工船とともによみがえってきたのがうれしい。また新しいフォークとして、歌い続けられると、もっとうれしい。「若者たち」は教育実習のときに、子どもたちとよく歌った。終えるとき、子どもが「この歌を聞くたびに先生を思い出すでしょう」と言ってくれたあの子は、今幸せなのだろうか。元気であればいい。どこかでひょっこり会って「先生!」と声をかけてくれるか。
蟹工船(韓国本)
最近「資本論ブーム」なのか、店頭に資本論関係の本が目立っていたので
つい手に取って読んでみました。
マンガで読破シリーズは他に「資本論」を読んだのですが、本書蟹工船は
構図といい画力といい、他のシリーズよりとても良く仕上がっている感がします。
特に原作の内容をうまくマンガで表現しており、現代の若者に文学を読んで
もらうためのアプローチとしても良い選択だと思います。
集英社文庫の有名漫画家を表紙デザインに起用したように、このシリーズも
有名漫画家さんに描いてもらったら、より多くの若者に興味を引いてもらえそうですね。
蟹工船 一九二八・三・一五 (岩波文庫)
オノマトペの多用、しっくりこない比喩。そうあげつらうと駄作と評しているみたいなのですが、労働者の沸々とした怒りを荒々しく表現しているのに効果を与えているようです。ダイナミズムが生まれていると言えば、より自分の気持ちに近いかもしれません。
搾取される労働者の怨嗟が爆発するまでの光景が、肌を刺すオホーツクの寒風のように脳裏に突き刺さりました。
死と隣り合わせの蟹工船の労働者ほどではありませんが、低賃金重労働で喘いでいるのは、現代のワーキングプアも同じだと思います。今と符合するエピソードがいくつも見受けられました。時代が巡って、現代において再び注目されるべき作品だと思います。
読んでいて作者は思想云々より弱いものが団結することの重要さを説いている気がしました。
しかし、こんな扇動的な小説を書いたら特高に捕まるのは火を見るより明らかだろう。
命を賭してこの作品を書いた小林多喜二の人間性に頭が下がる思いでした。