パリ、テキサス【字幕ワイド版】 [VHS]
いろいろなシーンの断片が記憶に残る映画です。主人公トラビスの奥さんの昔の映像が一瞬映るのですが、映画を通して、彼女が笑うのはその古いフィルムの中だけなんです。その笑顔が凄く印象的。その他には、店で振り返る彼女の赤い服や、晴れた日に並べられた色とりどりの靴。ライ・クーダーの音楽。そういうひとつひとつのものやシーンに対する美意識が凄く好きです。なんだか丁寧で大事に撮られたかんじが良いです。
初めてみたのは１０代。とりあえず有名な映画を見ておこうという感覚で。その時は、こういうビジュアルばかりに目がいって、でもなんとなく頭の隅にずっと焼き付くといったかんじでした。そしてその断片を見たくて、何年か後に見たとき、不器用すぎる男とその愛に声をあげて泣きました!
パリ、テキサス [DVD]
この映画を観に行き、なんて不思議な映画があるのだと驚いたほどです。音楽にあわせて、何もない砂漠が映し出される。その中に「パリ」がある。なんとも不思議です。
離ればなれになった息子に出会い、道路を挟んで大股で一緒に歩くシーンに、涙が出ました。そして一緒に妻を捜す旅に出ますが・・・
ベンダースならでは出来る作品なんだと思います。
パリ、テキサス
私はライ・クーダーの作品をすべて揃えているわけではありませんが、評価の高い『Chicken Skin Music』『Paradise And Lunch』など数枚のオリジナル・アルバムを所有し、愛聴してきました。その後、彼が手掛けたサントラ盤にも興味を持ち、ベスト盤『River Rescue: The Very Best of Ry Cooder』を経由して手にしたのが本作でした。
ほぼギター1本（一部はヴォーカルやセリフあり）の音楽にも関わらず雄弁で映像的。映画が好きでサントラ盤も買う方がほとんどだと思いますが、もし映画を未見の方やライ・クーダーをご存じない方でも、スライド・ギターの印象的な音色に耳を奪われ、その時々の心情と重なったり、様々な情景が思い浮んだりすることでしょう。映画がロード・ムービーゆえ、旅先などで聴くとなお格別。映画と切り離し、一枚のギター・インスト集として聴いても秀逸です。私は本作を聴くたびに、ライ・クーダーの確かな演奏力と解釈力、豊かな表現力につくづく感心させられます。そして何度聴いても、こう思うのです。”ギターとは、なんと魅力的な楽器なのだろう” と。
映画と連動したパッケージに魅力を感じる方は紙ジャケなどの国内盤を、パッケージにこだわりのない方は安価な輸入盤をお薦めします。
パリ、テキサス(オリジナル・サウンドトラック)(紙ジャケット)
これは、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得したヴィム・ヴェンダース監督のロード・ムーヴィー『パリ、テキサス』パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]のサウンドトラックのデジタル・リマスター盤です。
このサントラに引用された映画内のセリフを聴けばわかることなのですが、歳の離れた夫婦と幼い子供が離れ離れになったまま、子どもが自動車の旅の末に再会を果たすも、また一緒に暮らすかどうかは未定という映画のストーリーどおり、ライ・クーダーが、どこか芯の抜けた世界をほとんど自身のスライド・ギター一本の演奏で表現しています。
ひずんだスライド・ギターの演奏が弦の切れたような音を残して終わる最後は、すべてが宙づりになった暗闇の世界を、ぼくらに暗示します。
今回リマスターされたことで音質はよくなりました。でも、日本盤ライナーはアナログLPのものをそのまま転載。９で映画からの英語セリフの引用には、原文と対訳がついていますが、でも、４のラテンの伝承曲の歌詞・対訳はなし。
この日本盤のおまけが貧相なことに対して、星ひとつ減点で星四つの評価にします。
