主よ、人の望みの喜びよ~J.S.バッハ作品集II~
福田さんのバッハは旧録音のシャコンヌがつまらなかったため敬遠しており、久々に聴きましたが、作品に真摯に取り組んでいる気持ちが伝わってきて予想よりも遥かに良かったです。
ただ、すべての音を美しく出そうとするあまり力みが感じられたのが惜しまれます。強弱、テンポだけでなく気持ちの入れ具合も軽重がでていれば、より立体感のあるバッハになったのにと思います。
編曲は、ギリア編の998を含めて可もなく不可もなくといったところです。
シャコンヌ 〜J.S.バッハ作品集 1〜
先ずおやっと思うのはギタ―の音が金属的な響きを持っていることだ。ひょっとしてリュートかなと思わせるこのギターの響きは、しかし決して無機質ではなく、むしろ瑞々しい潤いを持っている。
福田はこのギターを駆使して強弱・硬軟織り交ぜ、ギターで表現可能なあらゆる音色を次々と表現してみせる。その振幅の大きさには圧倒される思いがする。それはあたかも厚い雲の隙間から行く筋も降り注ぐ陽光が地上の複雑な起伏を次々と照らし出す様な目紛しさと強烈さを持っている。
どの1音もおろそかにしない。その1音に最適と思われる音を考え尽くして表現する。それは命を削るような作業に違いない。音楽家というのは大したものだ。しかしそこまでしてもその音楽はあくまでバッハであり、それはバッハの音楽に真面目に対峙し、それに奉仕したいという福田の姿勢を表しているのだと思う。その姿は感動的だし、聞く方もそれを感じ尽くしたいと本気で思わせる素晴らしい演奏だ。