砦なき者
~脚本家、野沢尚の話題作です。今春ドラマ化されました。
テレビマンとして、業界の内側を見てきた野沢氏の鋭い視点にはドキリとさせられます。
ストーリーは、報道に携わるテレビマンと一視聴者の女性の電話ではじまります。
報道という大義に振り回され、なんでもカメラにおさめ片っ端から情報として垂れ流す。
そんな報道のありかたに鋭い切り口で~~挑んだ作品に仕上がっています。
そして一人の少女の自殺。
メディアの体質を利用しようとする陰謀。その存在に気付いたときから戦いが始まります。
エンディングにむけて衝撃的な展開になっていきます。そして予期せぬ結末にびっくりです。~
妻夫木聡が悪人だったあの2ヶ月 [DVD]
日本アカデミー最優主演男優賞の受賞コメントでもらい泣きし、すぐさまポチりました。
あんな妻夫木くんの表情を見たら買うしかないでしょう。
あっという間に観終わりますが、
「悪人」がどのような順序で撮影されたのかとか、俳優さんたちのインタビューもあったり、
本番を別のカメラで撮って実際に映画で使われたシーンを挿入してあったり、
妻夫木くんが「祐一」になる瞬間(金髪)などが観れて、ファンとしては大満足です。
砦なき者 [DVD]
このドラマは2003年に収録されて、翌2004年にテレ朝でOAされたものだ。映画本編と見紛うばかりのキャストを揃えたこともあり、重厚かつ密度の高い作品に仕上がった。役所広司がどこかで見たようなニュースキャスターを演じるが、この放送局(砦の中)の陣容が本当に凄い。鈴木京香、大杉漣、塩見三省、田中要次、内野聖陽って、全員が主演を取れる名優ばかりではないか。対する世の中側(砦の外)も妻夫木聡をはじめ、真木よう子、六平直政、もたいまさこ、本田博太郎という布陣で、びっくりである。これも野沢尚の脚本に由るところが大きいと思うが、この名脚本家は同年、本作を最後に自ら命を絶ってしまう。そう考えると意味深なシーンが多いことにも気付くのだが・・・メイキングで在りし日の野沢尚を観ることができるが、このとき胸中に何かあったのだろうか。鶴橋監督はこの後、妻夫木の悪役で鈴木京香を再起用した「天国と地獄」を撮るが、全く精彩がなかったのはやはりホンの力が大きいだろう。TVの暗部を映し出し、命をもって解決に当たったこのストーリーは、現実に照らし合わせると野沢の最後のメッセージだったような気がする。真摯かつ重い作風なので、痛快なタッチを期待している方は他の作品をお勧めします。
砦なき者 (講談社文庫)
テレビドラマの脚本家、野沢尚ならではの作品。
報道や取材に関する描写が丁寧で細かい。
そしてそこで起こる人間関係の力学に始まり、
報道被害、そしてテレビが作り出す「カリスマ」の姿が、
克明に描き出される。
「破線のマリス」の延長線上にあるこの作品は、
テレビを含むメディアの恐ろしさを自覚した
一人のテレビマンからの警鐘と言えるだろう。
つくづく、惜しい作家を亡くしたものである。