野のユリ [DVD]
この映画でシドニー・ポワティエは黒人として史上初めてアカデミー主演男優賞に輝いた。1963年11月22日はケネディ暗殺である。アメリカは暗いムードだったが公民権運動の戦いの盛り上がりを背景にした受賞である。日本では馴染みの薄い俳優で昨年亡くなったT・カーチスとの「手錠のままの脱獄」くらいかな。「野のユリ」はドイツ人のシスターを助けて教会を建てるというどちらかというと地味なストーリーである。ポワティエは現役バリバリだが監督のラルフ・ネルソンは忘れられてしまった。DVDも殆どない。優れた人なのに気の毒だ。「砦の29人」という西部劇では黒人のガンマンを演じて強烈な印象を与えた。
野のユリ [DVD]
アリゾナ砂漠をきままに放浪する黒人青年ホーマーは、車の故障で一軒の家にたどり着く。
その家には、東独から亡命してきた5人の修道女が住んでいた。
この地には教会がなく、巡回してきたトレーラーの中で説教が行われていた。
彼女達は、この地に教会を立てたいと切望していた。
彼女達には、ホーマーが、天から遣わされた者のように見えたのだった。
ホーマーは、日当仕事のつもりで、屋根の修理を手伝うが、院長はいっこうに賃金を払わない。
賃金がもらえない以上は、その場を去れない。
ホーマーは、院長の教会設計に巻き込まれていく。
最初は、ホーマーは、教会建設を賃金仕事と理解していたため、再三、賃金を払うように院長に迫る。
だが、亡命してきた修道女達には払うお金があるはずもない。
ある日、ホーマーは、来たときと同じようにふらりとその場を去っていく。
周りの人たちは、とうとう修道女の下からホーマーが逃げ出したと思ったのが・・・。
その後ふらりと戻ってくる。
最初は、やるならおれがひとりでやると勢い込んでいたのが、
ひとりではなかなか作業が進まず、結局みんなに手伝ってもらうことになる。
それを最初は、快く思っていなかったホーマーだが、
大勢の人を収拾させるためには、現場監督が必要で、
それに抜擢されてからは生き生きとしてくる。
ホーマーにとって、教会建設は「賃金仕事」から
ミッションのようなものに変わっていったのだと思う。
教会建設に関わることによって、自分は学があったら、
建築をやりたかったのだと思い出し、
教会建設によって、その仕事に携われたことを
嬉しく思うようになったのだろう。
修道女達は、ドイツ語をはじめ東欧の言葉を母語とする
人たちだったので、ホーマーが英語を教えていく。
そのシーンがなかなか微笑ましい。
動作を加えて、主語の人称と動詞を覚えていくのだ。
歌のシーンもある。
ホーマーの歌に修道女達が掛け合いをしていくのだが、
掛け合いはアーメンコーラスのような感じ。
ホーマー曰く、教会に行くときに
黒人が自然と口ずさむような歌なんだそうだ。
ゴスペルの原点はここにあるんだな。
ミッションとしての教会建設を終えたホーマーは
歌いながら静かに去っていく。
「労働」の意味について考えさせられた作品。
愛唱歌集
異国で暮らす老母が日本の歌を恋しがるので買った。
日本の歌のCDは由紀さおりとか島田裕子とかが主流だったが
鮫島さんは本場でリートを歌ってた人だけあって
すばらしい。癖のない、素直で澄んだ声であるので飽きないで
聞ける。いろんな類似企画のCDがあったがデンオンの録音のよさ、
選曲、ピアノの秀逸さでこれを選び、今も大満足している。
ブックレットの字が小さいのが唯一の難点。