本願寺顕如―信長が宿敵 (人物文庫)
これほどまでに生き生きとした顕如光佐を描いた作品を読んだことが無い.
浄土真宗本願寺十一世である本願寺顕如光佐は,戦国時代に織田信長と死闘を繰り広げたことで知られる.そのためか,顕如を扱った作品のいくつかは,織田方から見た歴史観を主体にストーリーを進めたり,羽柴秀吉など織田家の家臣の描写が過ぎる傾向がある.
本作品においては,決してそのようなことはない.本願寺顕如という人物を心ゆくまで満喫することができる.周りを固める人物として,妻のきた,顕如の長男である教如,そしてベスト助演男優賞といえる鈴木孫一も生き生きとして描かれている.
顕如ファンはもちろんのこと,信長好きの顕如嫌いにも,是非本作品を読んで欲しい.長編大作であるが,読み終えるのは容易である.むしろ本作品を読了せずに,途中で切り上げる方が難しい.
(文庫本発刊にあたり,同書の新刊本への書評を流用した)
浅井長政正伝―死して残せよ虎の皮 (人物文庫)
「浅井長政正伝」というより、織田信長と浅井長政の愛憎物語ですね。のっけから信長と長政が(肉体的に)絡み出すのでヒックリ返ります。ホモでも同性愛でもなく、古式ゆかしい「男色!」という風格のある男男関係を描く小説で、風の便りにその筋の雑誌で推奨されていたと聞きましたが、納得納得。しかしおそらく作者さんはその気のない方だと思います。生々しくない、というか、ネットリと「オトコ」に執着している感じがないですから(橋本治なんかにはある)。ですから、女性もノン気の男性も楽しめると思います。
男色の絆で結ばれた筈の二人が、政局と野心の相違と一族のしがらみとパーソナリティの違いからやがては敵対し、ついに穏和な長政が「望むは信長の首!」と咆哮するに至るあたり、ゾクリと来ますね。男同士で仲良しこよししてんじゃね〜、喧嘩しろ〜、というか、やれやれ〜、というか。
信長の人物造形が素晴らしく迫力があります。カッコイイのなんの。歴史小説で描かれる信長像はかなりの数見てきましたが、これほど華やかな信長は初めてのような。最低の父・信長vs良き父・長政の対比を見せている物語ですが、「父親としては最低な信長」を描く続編的な小説もございます。『狂気の父を敬え』です。こちらもいつか復活して欲しいですね。
金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康
この小説は織田軍?の中で一番部外者な、
家康を中心に会話ベースで話が展開して行く、
ミステリー小説に近い感覚だ。
長政への内通者がいるのか?
誰に騙されているのか?
どうやって殿軍が逃げおうせたのか?
気にしながら物語は進んでいくのだが
信長のイリュージョン的な再登場で、
よくわからないまま尻切れとんぼのまま
終わってしまった。
ただ今まで定石だった人物像が、新しい観点で描かれている点は
興味を惹いた。