J.S. Bach: Sonatas and Partitas for Solo Violin, BWV 1001-1006 [Hybrid SACD]
下手とは言わないが、曲(BWV番号単位)によって出来不出来がある。思い入れ、練習量、曲の解釈に対する自信、あたりに差があるのだろう。
全曲版にした企画の誤りだと思う。
Violin Concertos
Julia Fischer
Bach Concertos
Concerto for two violins in D minor, BWV 1043 - 14' 46
Violin Concerto in A minor, BWV 1041 - 13' 22
Violin Concerto in E major, BWV 1042 - 16' 28
Concertos for oboe and violin in C minor BWV 1060 - 14' 06
Julia Fischer, violin
Alexander Sitkovesky, violin
Andrey Rubtsov, oboe
Academy of St Martin in the Fields
Recording: London, 2 - 4 June 2008
バッハのヴァイオリン協奏曲は難しい作品だと思う。ヴィヴァルディの影響を受けていると言われるが、BWV 1041 第2楽章のバッソ・オスティナートはドイツ的だし、同楽章の始めのあたり(ユリア・フィシャー盤でいうと track 5 の 1' 55 あたり)に出て来るヴァイオリン・ソロの旋律は『ニーベルングの指輪』のノートゥングの動機のように輝かしい(その部分はハーンの演奏Bach Concertosで聞くと気持ちよい)。
そして、上記作品群のリトルネッロの鮮やかなこと! その鮮やかさは、なかなか演奏するのが難しいらしく、ヒラリー・ハーンの演奏では、ほとんどヴァイオリン・ソロばっかりしか聞こえてこない。
バッハのヴァイオリン協奏曲においてはトゥッティとソロの交替が完璧でなければならない。このフィッシャー盤においても、BWV 1043, 1041 では、トゥッティとソロの交替は、うまくないし面白くない。ただし、3曲目の BWV 1042 のリトルネッロは悪くない(第1楽章の間の取り方が良い)。Academy of St Martin in the Fields は指揮者を置かなかったのがかえってよかったと思う。4曲目の「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 BWV 1060」は、第1楽章と第3楽章でフィッシャーのヴァイオリンと Andrey Rubtsov のオーボエが、かぶって聞こえるのが惜しい。
Saint-Saens: Violin Concerto No 3 / Greig: Piano [DVD] [Import]
ドイツの若手ヴァイオリニストが
一夜にヴァイオリンとピアノ協奏曲を、それぞれソリストとして弾ききるという
超絶的なステージの録画です。
もちろん、彼女の専門はヴァイオリンですから
ヴァイオリンに分があるのは当たり前…安心して彼女の超一流の技術、芸術性に没頭できます。
しかし一方でピアノも十分立派なピアニストの演奏です。
事前に「ピアノもプロ並みに弾けちゃうヴァイオリニスト」という情報があるから
こちらも構えて聴いてしまいますが…。
しかし、このDVDのキモは
随所に挟んであるある彼女のインタビューだと思います。
このステージに臨むまでに、どんな準備をしたか、淡々と語っています。
時間や体の使い方、意識をどう持って生活してきたか、
…それを聞くにつれ、並外れた精神力の持ち主だと思いました。
彼女は「何よりも表現したいものがあって、楽器はあくまで手段」と言い切りますが
二つの楽器をプロレベルに保持することの困難さを
練習と知恵で乗り越えてきた彼女に心からブラボー(ブラバ?ビ?)です!
Violin Concerto (Hybr)
僕は洋楽ロックを聴いてきましたが、エレキギターも弾き、弦のブランドや太さ、ピックの材質や微妙な厚さの違いまでこだわって「いい音」を追求します。ですから、音楽に対しては非常に辛口です。例えばヒラリー・ハーンは僕の基準では三流です。
さて、ユリア・フィッシャーのこのアルバムですが、あのハイフェッツを彷彿とさせるところがあります。音の違いとしてはハイフェッツが男性的な強さを象徴する様な素晴らしい音であるに対してユリア・フィッシャーは女性的な切なさを象徴する素晴らしい音です。
ユリア・フィッシャーは基本的にバッハを得意としますが、チャイコフスキーの本作も非常に聴かせます。ユリア・フィッシャーを買うときは最初の1枚は「J.S. Bach: Sonatas and Partitas for Solo Violin, BWV 1001-1006」で、次に押さえたいのが本作です。両者とも、恐らくクラシック史上に残る録音になるでしょう。
僕は確かにハイフェッツを完璧と思っていますが、ハイフェッツのレコーディングでオーケストラがハイフェッツの偉大な演奏を台無しにすることがしばしばあって困ります。ユリア・フィッシャーしかりでしょう。
iTunes Store で試聴出来るのでフィッシャーの素晴らしい演奏を体験してみてください。