嫉妬 (集英社文庫)
表題作「嫉妬」は夫の浮気を知ることから主人公麻衣が夫を問い詰める。揺れ動く繊細な心の
葛藤、まるで嫉妬は愛のもう一つの情熱といわんばかりの麻衣の夫に対する気持ちが伝わって
くる。短編「凧の光景」「彼女の問題」も秀作で、夫婦の関係、恋が冷めたあとも延々と続く
結婚生活を見事に表現した作品である。
情事 (集英社文庫 143-A)
今は亡き森瑤子氏が、37才の時書いた処女小説。初めてにして「すばる文学賞」を受賞したという作品です。
彼女自身がイギリス人と結婚したということで、小説もイギリス人の夫のもとで、老いを感じ始めた妻が起こす情事について描かれています。読み出したとき、「山田詠美氏の直木賞受賞作『ソウルミュージック・ラバーズオンリー』に良く似たシチュエーションだなぁ」と思いました。山田氏が森瑤子氏の影響を受けているということなのでしょうか?
森氏の作品は、単なる情事ということではなく、女性が女としての絶頂期を過ぎたときに感じる焦り、性への欲望、守らねばならない日常というしがらみ‥そんなものが切々と迫ってきます。
30代後半から40代の既婚女性に読んでいただけるといい本と思います。
愛の美学 森瑶子が遺した (集英社文庫)
19年前に亡くなった森瑶子の遺した作品のなかの名言の数々が掲載されてる。恋愛、性愛、
男心と女心がテーマで、これでもか、これでもかという恋愛についてのフレーズに共感できる。
「双方が同時に同じ質と量で愛しあえることはめったにない」
「人間というのは悲しいかな、何の見返りもなしに永続的に人を愛し続けていくことができな
い動物である。」「嫉妬は人の一生につきまとう感情である。」
「人との関係で私が一番重要視しているのは距離の取り方である」
名言がいっぱい詰まった一冊です。一読をお薦めします