翼に日の丸 外伝 極光篇 (角川文庫)
ラバウル烈風空線録のような長編の形式ではなかなかリアリズムとロマンをバランスさせることは難しいのかもしれません。有無を言わさぬ物量の差が時間とともに、その微妙なバランスを壊してしまうのです。またいろいろな創作上の技法の実験の余地も限られてしまいます。逆に、ぶつ切りのこのような短編のアンソロジーではこのバランスがとりやすいのかもしれません。もっともそのためにはかなりの力量を必要とするのはいうまでもありません。”うしろの撃墜王”は水上機を題材とした珍しい、しかしユーモラスな出来上がりになっており、”夢幻滑走路”はドストエフスキーの”白夜”を思い起こさせる幻想的な短編に仕上がっています。”オーロラが消えた夜”は、B29迎撃に架空の新鋭機”極光”が大活躍をする作品ですが、主人公の最後の一夜の思い出を悲しくも鮮やかに描写することに成功しています。
幻詩狩り (創元SF文庫)
読んだ人を異世界に引きずり込む?幻詩を巡る物語です。
それほど長くない作品ですが、冒頭の幻詩が蔓延した現代日本を描く異常な状況から、幻詩の誕生、日本語への翻訳、日本国内で蔓延していく様子などが、ところどころ巧みに端折って、スピーディに語られていきます。
最後は都合良くまとめすぎているように思いますが、アイデア、構成など読んで損はしないと思います。
反在士の指環 (徳間デュアル文庫)
最後の最後まで混乱したまま終わってしまったけれど読後感は良いです。
主人公はポーンかライオンか?で感想は変わってくると思うけれど、
私はポーン視点で読みました。
この小説の基盤ともなる「反在」という概念が難しくてのめりこむのが難しいとおもうけれど
しつこくさりげなく説明されているので最後のパラドックスも綺麗に決まって気持ちのいい読後感です。
分厚い本だけれどさくさく読めました