シー・マイ・フレンズ
前作の「コーラル・コレクション」に続く、THE KINKSのヒット曲の自作カバー集第二弾。これまで、RAY DAVIES氏およびTHE KINKSのトリビュート・アルバムはあったし、その中で1曲くらいはRAYとの共演曲がアルバムに入っていたが、今回は初の全曲共演。そして、この国内盤のセールス・ポイントはボーナストラックが最後に2曲収録されていて、SHM−CDということかな。ボートラも単なるオマケを超える出来ですよ!?
THE KINKSで発表した曲は全部、聴いて知っているので、やはりTHE KINKSのオリジナルとどうしても比べてしまう。オリジナルが素晴らしいので、カバーの出来が良くても、私としてはこうしたカバー集に星5つをあげるわけにはいかない…それで、星は4つ。
それにしてもアルバムのタイトルが'SEE MY FRIENDS'とは、長年、共演嫌い(?)だったRAYにしては思い切った試みだ。収録曲から採ったアルバム・タイトルではあるが、一昔前ならブラック・ジョークと取れなくもないタイトルだ。思うにRAYもずいぶんと社交的になったものだと感心する。8回くらいアルバムを通して聞いたが、聞くほどに曲の良さと共演したアーチストのRAYに対する敬愛を感じるが、ファンとしては新曲で共演集を作って欲しいという願いも込めて、やはり星4つが最高点かな?
個人的には"Days / This Time Tomorrow","Long Way From Home","Dead End Street","See My Friends","'David Watts", 'Moments''が単なるカバーを超えた、出色の出来だと思う。特に'Moments''は'PERCY'収録のスタンダードっぽい作風なので、英語とフランス語で掛け合いながら歌うことで、この曲に何とも言えない磨きをかけている。これは必聴だ。他の曲も良いが、個人的には想定内なのであえてコメントはしない。
ミステリー・アパート [VHS]
モデルや俳優や芸術家志望者たちの住むアパート。仲のよかった隣人の死に疑問を抱いたカメラマンのキャットは、新しい入居者の正体を探ろうとして・・・
日本の「○曜サスペンス劇場」のようなストーリーで、「そんなことしていいの?」「そいつ信用できるのか?」と気になるところもサスペンスドラマとそっくり。・・・と思っていたら米国でもテレビ放送だったようで。道理でこの手の話にありがちな車を壊すアクションがないのね。
当時は仲良しだったらしいC・トーマス・ハウエルとレイ・ドーン・チョンのコンビもなつかしいですね。
エックス・レイ
~いわゆる自伝と思ったら大間違いである。稀代のひねくれ者レイ・デイヴィスが、単なる自伝など書くはずがない。舞台はいきなり未来。ひとりの青年が社命によってレイを取材に行くという設定で、レイとキンクスの過去が語られる。
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60年代には既に存在した弟でギタリストのデイヴとの確執。ビートルズ、ストーンズ、フーへの強烈なライバル意識。そして栄光と悲惨。レイは実は自らの分身である青年に語っていく。そして最後には……。
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ロックにおける最高の詩人であるレイの構成力と筆致が見事で、何度も読み返したくなる作品だ。これを読んだら、あなたは次の日にはキンクスのCDを買いに出かけるだろう。ベスト盤くらいしか売ってないけど。~
See My Friends
やっぱり買ってしまうのがこの人の音楽を好きになってしまった自分に課された業のようなものでしょうか。
正直なところ、The Kinksの再結成、期待しない方がおかしいですよ。それはなかったとしても、Ray自身のオリジナルニューアルバム、聴きたいです。これは体のいいお預けなのか?
しかし、実際に聴いてみると、このアルバムかなりいいです。僕は1曲目のBetter Daysと7曲目のWaterloo Sunsetが心に染みすぎました。Jackson Browneなんか連れてきて、反則じゃないですか?
それぞれの曲はそれこそ擦り切れるほど聴き込んだものばかりですが、新しいアプローチで提示されるとそこにある色あせることのない魅力というか魔力がより一層くっきりしてきて、しかもRayの声の良さも思い知らされるんだから、やっぱりこの人は反則だ。
この作品に触れることで、The 88なんていうなかなかいい曲を作るバンドのことも知れたし、Rayのすばらしさは再確認できるし、ファンは買うしかないです。
・・・きっと僕と同じように、なんやかんやいいながら買っていらっしゃるのでしょうが・・・
ザ・キンクス・コーラル・コレクション
あのレイ・デイヴィスがクラシックの名門デッカから出したアルバム。とはいえ、全てレイ自身の作品で固められ、彼自身がリード・ヴォーカルをとり、エレクトリック・ギターやベースなども加わっているし、楽器が加わらない5曲目も良く、ただのイージー・リスニング風アルバムには堕していない。それどころか、レイとクラウチ・エンド・フェスティヴァル・コーラスのコラボレイションは、ここに収められた曲の数々にオリジナル版とはまた違う魅力を加えている。
9−14曲目がヴィレッジ・グリーン・メドレーとなっているが、このアルバム全体があまり切れ目もなく演奏され一つの雰囲気を作り上げてもいる。一癖も二癖もあるレイおよびキンクスの曲で固めているのに正統派のクリスマス・アルバムのように聴こえるのも面白い。「ウォータールー・サンセット」、「セルロイド・ヒーローズ」、「ワーキングマンズ・カフェ」、「ヴィレッジ・グリーン」など、もともとノスタルジックな美しさを持つ曲はもちろん、その他の曲もよい。「ヴィクトリア」や「シャングリ・ラ」も感動的だ。「ユー・リアリー・ガット・ミー」は、合唱から始まるのがユニークなものの少々寂しくもありパワー不足な感もあるが、最後の「オール・オヴ・ザ・ナイト」では印象的なギターのフレーズが登場すると合唱団まで大いにのって歌ってアルバムを締めくくる。
残念なのは、噂になっていたキンクス再結成がならず、ここにもデイヴが参加していないことだ。「キンクス」の名を使ったアルバムを作ったことがレイの再結成の気持ちが高まってきたことの表れなのか、それともそこにソロ作も入れたことが「自分こそがキンクスだ」もしくは「自分ひとりでもキンクスの音楽をやっていける」という気持ちの表れなのか、いろいろと憶測してしまう。次の作品が気になるアルバムでもある。
全体としては星4.5くらいだが、SHM盤ということで星5つ。