LOST CHILD
私には音楽的な難しいことは分かりません。
でも、坂本龍一さんの作られた曲を耳にする度に、素人ながら思います。
「メロディーラインが綺麗すぎて毒々しい…」と。
「永遠の仔」の主題歌になったこの曲は、とても美しくて
繊細で、精密に作られていて…。
下に落としたらパリンと割れてしまうガラスのような危うさを感じさせます。
この曲を聴くと無性に泣きたくなるのは「永遠の仔」のストーリーを思い出すからというだけではなく、
「哀しすぎるほど綺麗」なこの曲に含まれた「毒」が琴線を揺らすからかもしれません。
永遠の仔〈2〉秘密 (幻冬舎文庫)
長い長い小説ですが、全巻一気に読み終えてのレビューです。
本当にひどい話です。誰も幸せにならない。
傷付き、悩み、もがき、結局誰も救われない。
その描写力も半端でないです。
ものすごい量の参考文献からもわかりますが、心を病んだ人間について、作者が徹底的に調べ上げ、それらと向かい合うことで完成作品であることがわかります。
この作品を完成させるために、作者が心身を病んだというのもわかります。
量も量なので、登場人物の「人生の重み」がありありと迫って来ます。
その結果、読後にはかなりの疲労感を伴います。
「さくっと読めました」なんてレビューしてる人もいますが信じられません。
けれど一方で、登場人物たちを羨ましくも思えるのです。
僕はここまで人生に真摯に取り組んでいるのだろうか。
これほど自分のその後を想い合ってくれる仲間はいるのだろうか。
これほどに人生は険しく、美しいものなのか。 自分のちっぽけな人生と比較してやはり羨望の想いすら感じてしまう魔力がある作品です。
重苦しい作品ですが、読み応え十分です。今では安く手に入るのもいい。★5つです。
永遠の仔〈上〉
少年たちがトラウマを乗り越え生きていく様子がえがかれている。
描かれているのは、いっけん今の世界に生きる我々には関係ないように思えるが、
最近のニュースを見ていると、決して他人事ではないようにも思える。
そして、ちょっと考えすぎた言い方をすれば、
この本と同じような事件はいつでも怒りえるのではないか。
それだけ現実に即した物語なので、本の中の世界に感情が入りやすい。
しかも、同じような悩みを抱えた子供が今もどこかにいるのではないかと考えると、
どうにもやるせない気持ちになる。
子育てのマニュアル本も良いが、
暇があるならこの本をマニュアル本代わりにしてもらいたいものでもある。
本も厚くて、字も比較的小さいほうだと思うが、
読みすすめていくうちにドンドン世界に引き込まれてしまう。
なので、読み終えたあとも、すぐ「下巻」を読みにいける。
むしろ上巻を読んだら下巻を読まずにはいられないだろう。
どこか病んでいる現実を、ちょっと離れたところから見るのにはこの本が良いかもしれない。
むしろ、そーいった、離れたところから現実を見るという錯覚を経験させてくれるのがこの本だと思う。
恐ろしく灰色だ。
音楽は坂本龍一だが、音色も冷え冷えしている。
ドラマ全体に笑みというのは一切ない。
中谷美紀、石田ゆり子はきれいなのに明るさというのは取り払われている。
ストーリーのテンポ、演出も何だか昼ドラを見ているような流れだ。
だが、これほどまでの色調をTBSやフジのドラマではできないだろう。どこかにからっとした部分、希望を作ってしまう。日テレだから出せる味だ。
このトーンに最後まで惹きこまれてしまうのだ。
永遠の仔 オリジナル・サウンドトラック
TVドラマ「永遠の仔」のサントラ。
TVドラマのサントラとしてはレベルは高いと思う。
ドラマの雰囲気の絶妙に絡む冷淡な音世界はデザートアンビエントだ。
つまり音が前面にでるのではなく、あくまでデザートの役割を果たしているのだ。創ったのは半野喜弘。あの坂本龍一との活動などで有名だ
教授の影響を受けたと思われる曲群はこれからのTVドラマサントラの
新しい方向性を兼ねている。