ざくろの色(デジタル・リマスター版) [DVD]
あまりに美しい画面が続くし、登場する人物群もあやつり人形が語りかけてくるよう。
奇妙にもやがて目蓋は重くなり、眠くなって仕方ない映画だ。
眠気を振り払いながら、凝視続ける万華鏡の色彩の映像。
魔術師の催眠的な振り子を見つめ続けたような不思議な気分に酔ってしまう。
映画というもののある種の異様な、美術的な側面を思い知らされる。
旅行人163号特集コーカサス〜アゼルバイジャン+アルメニア+グルジア
「地球の歩き方」に詳しく紹介されていない地域の旅の楽しさを伝えてくれる年2回発行の旅行雑誌「旅行人」ですが、このコーカサス特集は特にお勧めです。アルメニア、アゼルバイジャン、グルジアが取り上げられていますが、やはりグルジアの記事が一番良かったですね!ヒンカリやハチャブリを食べ歩きながら、トビリシからカズベキまでの軍事街道の自動車旅をまたしたくなりました。グルジアは本当に不思議な魅力のある国でした。
コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)
チェチェン紛争から昨今の南オセチア問題まで、常に世の中を騒がせ続けている「コーカサス」についての概説書。
国で言えば、アゼルバイジャン、グルジア、アルメニア、ロシアの一部などだ。
こういった少々マニアックなテーマだと、他の書籍やニュースから集めた二次情報だけで構成されている本もたまに見かけるが、本書は明らかに違う。
著者が自分で集めた貴重な一次情報が中心で、ミクロの視点とマクロの視点のバランスが絶妙な、とても読み応えのある一冊になっているのだ。
一口にコーカサスと言ってもものすごく多様で、民族も言語も宗教もいろいろ。
その中で著者はアゼルバイジャンの専門家らしく、アゼルバイジャンについての記述が充実しているが、その他地域についてもしっかりと書かれている。
おそらく日本にはこの地域の専門化が少ないと思われるので、著者の視点は非常に貴重なものだろう。
今後もぜひ、書籍などを出していただきたい著者だ。
ちなみに、著者の立場はあくまで中立なのだが、少々アゼルバイジャンびいき的な記述も見られる。
でも、そんなところにもむしろ、著者の人間味が見られて好感を持ってしまったりも・・・。
アルメニアン・ダンス[全曲]
今日本で最も勢いのあるプロ吹奏楽団、シエナ・ウインド・オーケストラによる『アルメニアン・ダンス』全集です。パート1とパート2(3曲)に加え、『アウェイデイ』で有名な作曲家アダム・ゴーブの『メトロポリス』が収録されています。
シエナの演奏が如何に洗練された素晴らしいものかは皆様もご存知の通りかと思います。吹奏楽曲の中でも知名度が抜群に高く、かつ高度なテクニックを要求される事で知られるA.リードの『アルメニアン・ダンス』は、シエナの実力と勢いを遺憾なく発揮させた演奏となっています。ライヴ録音(一発録り)の為か、他のレビュアー様もおっしゃっている通り「ちょっと吹きすぎ」という印象も何度か受けます。しかし、それさえも魅力と感じてしまう様な熱演、まさにリードの魅力を余す所無く表現しきった名演奏です。アルメニアン・ダンスを収録したCDは数え切れないほど販売されていますが、これは3本の指に入る完成度を誇っているでしょう。
また、メインの『アルメニアン・ダンス』に隠れていますが、A.ゴーブの『メトロポリス』も卓抜した演奏技術が光っており、15分超の演奏にすっかり聴き入ってしまいました。物語性豊かな『アルメニアン・ダンス』とは対を成し、どこか機械的で不気味な雰囲気さえ感じる作品ですが、シエナの団員皆さんの確固たる技術に支えられた各パーツがどんどん組み合わさってゆき、ダイナミクス豊かな一つの曲に完成していく様に思わずぞくぞくしました。
シエナのCDでは『ブラスの祭典』などでも『アルメニアン・ダンス』を聴くことができますが、パート1から2まで一気に揃えられる事、そしてその圧倒的な演奏内容から、迷うこと無くオススメする一枚に挙げられます。