ドラゴンクエスト2―悪霊の神々〈上〉 (双葉文庫―ファミコン冒険ゲームブックシリーズ)
かつて一世を風靡していたファミコン冒険ゲームブックシリーズの中でも初の「上・下2巻組」で発売されたのがこれです。
人気ゲーム「ドラゴンクエスト2〜悪霊の神々〜」をゲームブックの題材としています。
先行発売の「ドラゴンクエスト」の続編として前作から約100年後の世界で、世界を破滅へと導く闇の神官・ハーゴンを
伝説の勇者・ロトの子孫に当たる3国家の王子・王女が討伐していきます。
上・下巻構成でそれなりに頑張って作ってはいるものの、後に発売されたエニックス版と比したら
「天と地の出来の差」があります。
エニックス版をやってしまったら敢えてやる必要性はないです。
光の山脈 (ハルキ文庫)
樋口氏の作品を読むのは4作目になる。緻密な描写は無駄がなく、なおかつ氏独特の迫力があり、それを読むだけでも1900円を支出する価値はある。しかし、この「光の山脈」はそれだけの本ではない。
社会派小説とも呼べるだろう。産廃行政の問題、人が人を私的に制裁することの是非、封建的な地方の因習とそれにかみあわないよそ者との確執。南アルプスの山麓に居を構えて自ら日々体験しているであろう、そうした問題提起は執拗で、氏の執念が感じられる。
しかし、その重さを吹き飛ばす純粋な空気と爽快感が全編を貫いている。悪者を良い者がやっつけるという単純なストーリーと甲府駒ヶ岳のキーンと冷えて澄んだ空気が、ストレートに読者の心臓にたたき込まれる。
読んだ後に、1人山に登りたくなった。そう、氏の冒険小説はいつもそうなのだ。どこか知らない山に、1人で登りに行きたくなる、すぐれた冒険小説というのは、そうやって男の冒険心を揺さぶるものだ。
約束の地
妻を事故で亡くし、10歳の娘と二人になった男が南アルプスの野生鳥獣保存管理センターに赴任され、自然の驚異と人間の狂気に触れながら力強く生きていく物語で読み応えがあった。山が荒れて野生動物が里に下りて農業被害が増える。お腹をすかせた野生動物は田畑の食料を食べるだけでなく人間を襲い人的被害も増えていく。人間はその原因も考えず、野生動物を駆除することを望む。もとを正せば、山が荒れたのは人間の不法投棄や焼却施設建設が原因で、その結果、水質汚染や土壌汚染が広がり野生動物たちを追い詰めていたのだから自業自得であるのだが、それを理解できない人間の様子が本当にリアルに描かれていて考えさせられることが多かった。それ以外にも、野生動物たちとの死闘や、人の死に対する考え方など、本当に読み応えが多く、最後まで飽きずに読めた。