ベスト・アルバム
ベスト、と銘打たれていることに疑問を感じますし、「BANG!」「ひらく夢などあるじゃなし」を聴いたあとではいささか地味ですが、なかなかの佳曲揃い。ハイライトは(3)(7)(10)あたりでしょうか。(5)なんて完全に呪われた歌といってよい。おどー!いわゆるJポップとかいう音楽もどきとは対極に位置する作品。平服。10年後も聴いてます。
おんなの細道 濡れた海峡 [VHS]
2000年に亡くなった田中小実昌、通称コミさんは『ポロポロ』で谷崎賞を受賞した小説家でしたが、一般にはテレビ番組に登場した印象からストリップ小屋の座付作家ぐらいにしか思われていなかったのではないでしょうか。
『濡れた海峡』の主人公は若き日のコミさんを彷彿とさせる歌手の三上寛が演じていて、まるっきり演技はしてはいませんが、便所にしゃがんでポロポロつぶやいている様子は、うらぶれたコミさんの小説の感じがよく出ています。女性たちは山口小夜子、桐谷夏子、小川惠の三人とも素晴らしく魅力的です。石橋蓮司の相手役を演じている桐谷夏子は、石橋の実際の奥さん、緑魔子をふっくらにしたような女性なのがなんだかオカシイ。
東北地方(岩手県あたり)の貧しい漁村や地方の田舎町を漂白する一種のロードムービーで、徹底的に金持ちは出てきません。70年代の一部のピンク映画にもあった「うらぶれ感」がいっぱいです。
キネマ旬報でも評価が高かった作品で、VHSもシネスコ・サイズなのはあり難いですが、ぜひDVD化して欲しいですね。
ひらく夢などあるじゃなし
初期三上寛のどす黒い究極の傑作。三上の他のコアな作品同様、誰にでもすすめられる作品じゃない。センチメンタリズムを極力排した、ひりひりした、おそろしい作品である。自分が今生きていること、生きざるをえないこと、生き残っていること、また自分という、けだもの以上人間以下の存在や宿業について、まざまざ思いをめぐらせてしまう。因業な語り部三上寛の言霊を聴け!
伝説のフォークライブシリーズ VOL.1<ディレクターズカット版> [DVD]
この「伝説のフォークライブシリーズ」は、VOL.1~VOL.3まで3枚発売されていますが、私は3枚とも買いました。いずれも2時間程度の内容で、しかも各アーティストの代表曲が1999年当時のライブで見れます。70年代のフォークが好きな方なら3枚とも「買い」だと思います。
このVOL.1ですが、高田渡編は、京都の磔々で収録されています。高田渡がメインの曲が10曲、いとうたかおがメインの曲が3曲、シバが2曲、村上律が1曲、中川イサトが2曲、中川五郎が2曲という構成です。
高田渡のパートは、映画「タカダワタル的」を思い出させてくれます。
ステージでのしゃべりも入っていますが、ちょっと聞き取りにくい感じです。
三上寛編は、東京でのライブで、一人でギター(アコースティックではない)を弾きながら、「夢は夜開く」や「パンティーストッキングのような空」など彼の代表曲5曲が収められています。
元々テレビ番組用のものですので、間にインタビューが入ったりしますが、そういう場合にありがちな、曲が途中で途切れることはなく完奏状態で収められています。その点でも好感が持てます。