人生の本質―ザ・ブック・オブ・シークレット
本書のメッセージは、下記のとおり、15の秘密(*)として挙げられたものに尽きますが、
スピリチュアル本として、総花的、網羅的であり、読者の読書歴によって、印象に残るポイント
は違ってくると思います。私は、ニューアース、セドナ・メソッドなどの名著の影響を強く受け
ているせいか、エゴ、今に在ること、解放、手放すといったキーワードが印象に残った他、「死」
と向き合う心構えをチャレンジングに詳述した10章が新鮮でした。ただ、やはり大著で総花的
な内容のため、読み終えた後も、頭の整理ができず、メイン・メッセージは何だったのか、
「人生の本質」というタイトルながら、本書のメッセージの「本質」がつかみにくいというのが
正直な感想です。
明白なのは、成功哲学とか自己啓発書ではなく、現代の人間存在が抱える、欠乏感、焦燥感、
恐怖感、疎外感、孤独感への処方箋となるよう心がけて書かれたものということで、現代人がより
良く生き、より良く死んでいくための自分との向き合い方、個人という枠、エゴの解放を、
ヒンドゥー教、仏教哲学を通じて、主にキリスト世界の人々に向けて書かれているということです。
*15の秘密
1.人生の神秘
2.世界はあなたの中にある
3.調和へと続く4つの道
4.求めるものは既にあなたの中にある
5.苦悩の原因は実在しない、6.あらゆる束縛から心を解き放つ
7.すべての人生はスピリチュアルである
8.悪はあなたの敵ではない、
9.あなたは多次元世界に生きている
10.死が人生に可能性を与える
11.宇宙はあなたを通して思考する
12.時に意味があるのは「今」だけ
13.個人を捨て、真の自由を獲得する
14.あらゆることに人生の意味がある
15.全ては純粋な本質である
一方、明らかな誤植、てにをはの混乱など、ダイヤモンド社のような大手のハードカバー
にしてはお粗末な校正と推敲だと言わざるを得ません。これは著者や訳者の問題ではなく
編集者の問題で、改訂してもう少し読みやすくしないと、せっかく良い内容でも読者に正しく
伝わらないと思います。一方、翻訳自体もこなれていないのか、原著が抽象的に過ぎるのか
(米amazonのレビューでも、わかりやすいという評価と、概念がつかみにくいという評価に
分かれています)、読んでいてぐいぐい引き込まれていくような勢いが欠けているように感じました。
「ニューアース」の吉田利子氏がもし本書の翻訳を担当していたらどんな本になっていただろうか
とやはり思ってしまいます。吉田氏の訳で読んでみたいです。
(そもそもタイトルである「The Book of Secret」を、吉田氏なら「人生の本質」と訳すだろうか、
どう訳すだろうか、それだけでも聞きたいところです。)
ファミリー・シークレット
2010年5月の発刊。「オンエア」は2010年秋に読み直していましたが、こちらは、なんとなくすぐには手が出せませんでした。タイトルから柳美里の現在が書かれていることを予想し、購入するのではなく今回は図書館で借りようと思ったのです。なるべくレビューを読まないよう気をつけて過ごし、2〜3時間まとめてひとりで読書の時間がとれる日を待ちました。読むのが遅くなったのは、図書館の予約数が多かったせいもあります。表紙が明るい色で嬉しいです。
「ファミリー・シークレット」で明かされるカウンセリング6回のうちの第2回と第3回の日付に驚きました。柳美里「オンエア」のサイン会があった日だったからです。サイン会は、2009年に2回、10月31日(土)リブロ池袋本店と11月1日(日)紀伊國屋書店梅田本店でどちらも14時から行われ、わたしは梅田での最後尾でした。その日については著者がカウンセリングを午前に受けたのかそれとも夜間だったのかがわかりませんが、あの日の著者の表情を思いかえしながら「ファミリー・シークレット」を読むことに。一気に読み切りました。
読後感の重さは以前よりも増したかもしれません。でも、著者が最後のところで「もう一人の自分である男と手を繋ぎ」と表現していて・・・これは今までどんなに書いても柳美里がずっとできなかったことだったけど今回初めてできたんじゃないかと思いました。著者の過去の捉え方が変わていくような、ある意味では解決の方向に向かっているような、そんな感じが嬉しかったです。今回は、はっきりと著者があとがきに「もしも、本書を、こころに痛みを焼きつけられたひとにとってのひとつの解決として読んでいただけるのであれば、書いてよかったと思える」と記してあるのが印象に残っています。「書くことは生きることだ」と書き続けてきた柳美里。生きてて欲しいです。今後もわたしは新しいのが出るたびにほっとすると思います。